RECORD

Eno.227 朧 戒の記録

朧本家

7月13日 朧本家。

「ただいま戻りました。父さん、母さん、ここに戻る前に戒ちゃんの様子をみてきました。
怪我などもなさそうで、元気そうにしていましたわ。」


「長旅ご苦労さま、一六葉。戒の様子も見て来てくれたのね……。
そう、元気にしているならよかったわ、ねぇあなた」



戒が朧の家を出て数カ月、息子の無事な様子を伝えられて安堵した。
反抗して家を出て行ったものの、大事な跡取り候補の1人であったため気を揉んでいた事は確かだった。

「……戒が元気にしているならばそれでいい」



今は。親族からの軋轢に耐えきれずに家を飛び出した事は理解していたし、
無理やり連れ戻そうとする方がより事態を悪化させるであろうことは想像に容易かった。

「父さん、母さん、びっくりしないで聞いてね。
戒ちゃんがね、お盆に家に顔を出すって言ってたわよ。彼女も連れて来たいって。ふふ」



一六葉は戒が本気で家と向き合う気になった事と、
お嫁さんにしたいくらいに好きな彼女が出来たみたい、と今の戒の状況を話した。

「せっかくご挨拶に来てくれるのだから、失礼な事はしないようにしてね」


「あら、戒が恋人をつれてくるの?それは楽しみね。
戒も大人になったものね……。ね、あなた」


「……色恋にうつつを抜かして鍛錬が疎かになっていないか確かめる必要があるな」


「あなたったら……そんな硬い事を言わなくても。
一六葉、その方はどちらのお嬢様なのかしら。戒から聞いてる?」


「鉄目火奈さんという方で、戒ちゃんより一つ上みたい。
鉄目家のお嬢さんだから、父さんもきっと気に入ると思うの。
すご~く鍛え上げた身体をしていたわよ」



シェアハウスで共に暮らしている事も、他の共同生活をしている者には
交際を秘密にしているという事も包み隠さずに父と母へと伝えただろう。
共同生活の輪を乱すような事もしていなさそうだから安心して見守ろうと一六葉は訴えた。

「鉄目家のお嬢さん……か、なるほど面白い。
ならば失礼のないように丁重にお迎えしなくてはな」


「父さん?くれぐれも失礼のないようにお願いします」