RECORD
Eno.368 煤掛ヶ原 黎瑛の記録
講義
『遠隔運動力学』とやらの講義を受けた。
テレキネシス、PK、念力。名前は呼ぶ人によって違うけど、要するに『アレ』についての話だ。
内容はまぁ、うん。興味深くはあったよ。面白いと思う。
いかにもな理屈を言われれば、なるほどね~とはなるし。
実際にそれで再現可能だというなら、そうなのかもしれない。
将来的には十分に実用可能な『力』になるのかもね。
磁力や重力だって、観測されるまでは未知の力だったんだから。
存在する以上、可能性はずっと高いと思う。
そうなんだけど、それにしても、だ。
こんな風に大手を振って、何の遠慮もなく、堂々と研究が出来るようになるなんて。
あるいは当時から、もしかしたらそうだったのかもしれないけれど。

喜ぶだろうか。子供みたいにはしゃぎがちなところがあったから、そうかもしれない。
悔しがるだろうか。認められたいという気持ちは人一倍だったから、それも十分有り得る。
嫌がるだろうか。研究と言いながら誰よりも憧憬を抱いていたから、可能性は高い。
ああ、でも、もしくは……。

へらりと笑って思考を止める。考えても仕方ないことだ。
所長が何を考えていたかなんてわからないし、何を思うかなんてわからない。
別段気難しいひとではなかったけれど、人懐こいひとというわけでもなかった。
いつも何かをずっと考えているようだった。何かに怯えているようにも見えた。
それが一体なんだったのか、結局、何もわからずじまい。

こんな研究がされているなんて。しかもその成果を、講義として堂々と大勢の学生に教えているなんて。
あのひとが知ったらどう思うのか、それにはとても興味がある。
気難しいひとではなかったけれど、人懐こいひとというわけでもなかった。
それでもクロエにとっては、あの時には何よりも頼りになる大人だった。
所長にも薫子さんにも、話したいことがたくさんあるよ。
だからいつかは、もう一度出会えたらいいな。
……向こうはもしかしたら、顔すら見たくないかもしれないけど。
殺したいほど、おれのことを憎んでいるかもしれないけれど。
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テレキネシス、PK、念力。名前は呼ぶ人によって違うけど、要するに『アレ』についての話だ。
内容はまぁ、うん。興味深くはあったよ。面白いと思う。
いかにもな理屈を言われれば、なるほどね~とはなるし。
実際にそれで再現可能だというなら、そうなのかもしれない。
将来的には十分に実用可能な『力』になるのかもね。
磁力や重力だって、観測されるまでは未知の力だったんだから。
存在する以上、可能性はずっと高いと思う。
そうなんだけど、それにしても、だ。
こんな風に大手を振って、何の遠慮もなく、堂々と研究が出来るようになるなんて。
あるいは当時から、もしかしたらそうだったのかもしれないけれど。

「……あのひとが知ったら、なんて言うんだろうなぁ」
喜ぶだろうか。子供みたいにはしゃぎがちなところがあったから、そうかもしれない。
悔しがるだろうか。認められたいという気持ちは人一倍だったから、それも十分有り得る。
嫌がるだろうか。研究と言いながら誰よりも憧憬を抱いていたから、可能性は高い。
ああ、でも、もしくは……。

「……ま、考えてもわかんないか」
へらりと笑って思考を止める。考えても仕方ないことだ。
所長が何を考えていたかなんてわからないし、何を思うかなんてわからない。
別段気難しいひとではなかったけれど、人懐こいひとというわけでもなかった。
いつも何かをずっと考えているようだった。何かに怯えているようにも見えた。
それが一体なんだったのか、結局、何もわからずじまい。

「ああ、でも、もし会えたら、教えてあげたいなぁ」
こんな研究がされているなんて。しかもその成果を、講義として堂々と大勢の学生に教えているなんて。
あのひとが知ったらどう思うのか、それにはとても興味がある。
気難しいひとではなかったけれど、人懐こいひとというわけでもなかった。
それでもクロエにとっては、あの時には何よりも頼りになる大人だった。
所長にも薫子さんにも、話したいことがたくさんあるよ。
だからいつかは、もう一度出会えたらいいな。
……向こうはもしかしたら、顔すら見たくないかもしれないけど。
殺したいほど、おれのことを憎んでいるかもしれないけれど。
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