RECORD
Eno.60 千夜 理央の記録
2年目の春来たりて
ゴールデンウィークは稼ぎ時だ。
アルバイト給与にも色が付くと言っていたような、
いや言っていなかったか?
まあどちらにせよ休日出勤扱いなので稼げる。
今年の帰郷は盆休み、旅行の予定も特になし。
精々帰りに映画館でのんびり一本観に行くか、くらい。
今年のゴールデンウィークはそうやって過ぎていく。
****
ここに来たのは去年の冬ごろ、
束都京帝大学商業科に無事合格し、
高校に通う必要がほぼなくなった頃北摩に越して来た。
一度上京もしたかったが、都会すぎると窮屈だ。
それでいて少し変わった地域のここが気になり、
束都の自由な校風とマンモス高の噂を聞きつけ
ここで大学生活を送りたいと決意して受験、合格。
晴れて大学デビューというわけだ。
当然、故郷と別れることとなる。
下の方の弟妹は泣きながら俺を見送ってくれた。
その涙の分まで、立派にならねばと思う。
たまたま休みだった父親の送迎で、
家族総出で最寄駅での送り出しを受け別れを告げる。

「今まで家を支えてくれてありがとうな、理央」
親父、大黒柱として、金銭面で、支えていたという意味ではあんたもだ。ありがとう。
「今まで家の事を手伝ってくれて本当に助かったよ。
だからこれからは理央のやりたいことをやりなさい。
私達も応援してるからね…でもたまには顔出しなさいよ!」
…ああ。まずは俺のやりたいことを貫くよ、おふくろ。
「あーっ!お兄ちゃん泣いてる!」「めずらしー!」
「やだやだ私も泣いちゃう」「行かないでお兄ちゃん!」
「だめなんだよ!行ってらっしゃいするんだから!」
…はは、最後に締まらない兄ちゃんだな。
お前らも元気でな、ちゃんといい子に、元気で育てよ。
発車のサイン音が鳴る。

言い終えてちいさく笑えば、ドアの閉まる音が聞こえた。
****
「しかしこっちの生活もだいぶ慣れたな」
帰宅後、思わずぼやきながらもポチポチとSarfをいじる。
映画のパンフレットの写真を家族グループに送った。
「そしてこれも使い慣れた気がする」
多分、おそらく。無表情には妙な自信が浮かぶ。
ー大丈夫だ、今日も生きていればこうしていつでも連絡が取れる。
弟も妹も、今では親を仲介してよく写真を送ってくる。
元気なようでよかった。
「現代は便利で助かる」
離れていても、こうして連絡が取れるのだから。
科学の力というものは進化したものだ。
だからこそ。

この数奇な街に。
偶然か、はたまた吸い寄せられたのか。
アルバイト給与にも色が付くと言っていたような、
いや言っていなかったか?
まあどちらにせよ休日出勤扱いなので稼げる。
今年の帰郷は盆休み、旅行の予定も特になし。
精々帰りに映画館でのんびり一本観に行くか、くらい。
今年のゴールデンウィークはそうやって過ぎていく。
****
ここに来たのは去年の冬ごろ、
束都京帝大学商業科に無事合格し、
高校に通う必要がほぼなくなった頃北摩に越して来た。
一度上京もしたかったが、都会すぎると窮屈だ。
それでいて少し変わった地域のここが気になり、
束都の自由な校風とマンモス高の噂を聞きつけ
ここで大学生活を送りたいと決意して受験、合格。
晴れて大学デビューというわけだ。
当然、故郷と別れることとなる。
下の方の弟妹は泣きながら俺を見送ってくれた。
その涙の分まで、立派にならねばと思う。
たまたま休みだった父親の送迎で、
家族総出で最寄駅での送り出しを受け別れを告げる。

「送ってくれてありがとう、4年間しっかり学んでくる」
「今まで家を支えてくれてありがとうな、理央」
親父、大黒柱として、金銭面で、支えていたという意味ではあんたもだ。ありがとう。
「今まで家の事を手伝ってくれて本当に助かったよ。
だからこれからは理央のやりたいことをやりなさい。
私達も応援してるからね…でもたまには顔出しなさいよ!」
…ああ。まずは俺のやりたいことを貫くよ、おふくろ。
「あーっ!お兄ちゃん泣いてる!」「めずらしー!」
「やだやだ私も泣いちゃう」「行かないでお兄ちゃん!」
「だめなんだよ!行ってらっしゃいするんだから!」
…はは、最後に締まらない兄ちゃんだな。
お前らも元気でな、ちゃんといい子に、元気で育てよ。
発車のサイン音が鳴る。

「行ってきます。大丈夫、あっちでも元気にやるさ」
言い終えてちいさく笑えば、ドアの閉まる音が聞こえた。
****
「しかしこっちの生活もだいぶ慣れたな」
帰宅後、思わずぼやきながらもポチポチとSarfをいじる。
映画のパンフレットの写真を家族グループに送った。
「そしてこれも使い慣れた気がする」
多分、おそらく。無表情には妙な自信が浮かぶ。
ー大丈夫だ、今日も生きていればこうしていつでも連絡が取れる。
弟も妹も、今では親を仲介してよく写真を送ってくる。
元気なようでよかった。
「現代は便利で助かる」
離れていても、こうして連絡が取れるのだから。
科学の力というものは進化したものだ。
だからこそ。

「俺は巻き込まれたのだろうな」
この数奇な街に。
偶然か、はたまた吸い寄せられたのか。