RECORD
Eno.182 ■■ ■一の記録
この神秘管理局にもずいぶん人が増えてきた。
何も知らない、知らなくてよかったはずの民間人が裏に、神秘に触れて関与を余儀なくされている現状を苦々しく思う。
こんな形で今なお侵略が進んでいるという中で、平静を保つのもなかなか難しい。
「……あまりこの手は使いたくなかったが」
研究室で伸びをする。
もっとローペースでやって行ければいいかと思っていたが、こうなってくると話は別だ。急場であっても、多少のリスク覚悟で動かねばどうにもならんだろう。
それなりに心地よくルームメイクを施した小ぶりな城を喪うのは手痛いが、背に腹は代えられない。
そんな決意を胸に秘めたその時、顔見知りが偶然研究室前を通りすがってゆくのを目の当たりにした。
――あ、シバルバ。
偶然かそれとも必然か。重い身を引きずるように動かし、急いで声をかける。
「おぉ、いいところにいたねシバルバ。ちょうどよかった。
君に頼みたい仕事があるんだ。君にしか頼めない」
「俺? 内容言って貰えないと仕事って言われても……」
「お前じゃないよ、君に言ってるんだ。聞こえているだろう?」
「あぁ、ごめんよフェイスレス。ちょっと疲れててね。例の件だろ?
君さえよければいつでもいいよ。僕もそっち派だから力になりたくって」
「……は? おいフェイスレス、何を言って――」
「うん、じゃあ――『よろしく』、シバルバ」
「あぁ、ありがとうフェイスレス。お陰で……やっと楽になれる」
多少のリスクは承知の上で、即座に動くとなればシバルバは欠かせない相手だった。
いかに と言えど、檻がある以上はそのルールに従う必要が出る。
檻の制約をある程度無視できる方向性になってしまった以上、もう引き下がることはできない。
シバルバは力になってくれているが、それでもどうにもならない部分、あるいは面倒ごとというのは常々ついて回るものだ。
「フェイスレス……やっと会えたな」
調査も兼ねて住宅街に足を運んでいたところを呼び止められた。まさかもう気付かれるとは。
つくづく、これだから人間は厄介極まりない。
「……ソウズカ。何をしているんだ」
「何をしているんだはこっちの台詞だ。お前――アイツに何をした?」
「何って別に今は何もしてないよ。そっちは今始めたってところ?」
「あぁ、まぁそうだね。そんなわけで手が欲しいんだけども」
「手? 勧誘しても無駄だぞ。こっちはもう腹括ってんだ」
「了解了解。じゃあすぐそっちに行くから場所確保よろしくね」
「うん……『頼むよ』ソウズカ。君の力もあれば心強い」
「それにしても……ついにだね。まさか動くとは思ってなかったよ」
「それについては少しいろいろあってな……思うところとかも含めて」
ソウズカ曰くこちらは単独だが、これ以外でも大きめの団体が動き始めたらしい。人手不足のタイミングなどを狙って動いたはずだったのだが、と疑問に思っていると、ソウズカがさらに情報を追加してくれた。
何でも、センゲンらしき存在が一部の民間に情報を共有して調査に踏み込んだという。
「……全く」
これだから、油断も好きもありゃしない。
想定外に次ぐ想定外だが、運がよければ協力者を増やす手立てにもなるだろうか。
En boca cerrada no entran moscas
CASE1 「シバルバ」
何も知らない、知らなくてよかったはずの民間人が裏に、神秘に触れて関与を余儀なくされている現状を苦々しく思う。
こんな形で今なお侵略が進んでいるという中で、平静を保つのもなかなか難しい。
「……あまりこの手は使いたくなかったが」
研究室で伸びをする。
もっとローペースでやって行ければいいかと思っていたが、こうなってくると話は別だ。急場であっても、多少のリスク覚悟で動かねばどうにもならんだろう。
それなりに心地よくルームメイクを施した小ぶりな城を喪うのは手痛いが、背に腹は代えられない。
そんな決意を胸に秘めたその時、顔見知りが偶然研究室前を通りすがってゆくのを目の当たりにした。
――あ、シバルバ。
偶然かそれとも必然か。重い身を引きずるように動かし、急いで声をかける。
「おぉ、いいところにいたねシバルバ。ちょうどよかった。
君に頼みたい仕事があるんだ。君にしか頼めない」
「俺? 内容言って貰えないと仕事って言われても……」
「お前じゃないよ、君に言ってるんだ。聞こえているだろう?」
「あぁ、ごめんよフェイスレス。ちょっと疲れててね。例の件だろ?
君さえよければいつでもいいよ。僕もそっち派だから力になりたくって」
「……は? おいフェイスレス、何を言って――」
「うん、じゃあ――『よろしく』、シバルバ」
「あぁ、ありがとうフェイスレス。お陰で……やっと楽になれる」
多少のリスクは承知の上で、即座に動くとなればシバルバは欠かせない相手だった。
いかに と言えど、檻がある以上はそのルールに従う必要が出る。
檻の制約をある程度無視できる方向性になってしまった以上、もう引き下がることはできない。
CASE2「ソウズカ」
「フェイスレス……やっと会えたな」
調査も兼ねて住宅街に足を運んでいたところを呼び止められた。まさかもう気付かれるとは。
つくづく、これだから人間は厄介極まりない。
「……ソウズカ。何をしているんだ」
「何をしているんだはこっちの台詞だ。お前――アイツに何をした?」
「何って別に今は何もしてないよ。そっちは今始めたってところ?」
「あぁ、まぁそうだね。そんなわけで手が欲しいんだけども」
「手? 勧誘しても無駄だぞ。こっちはもう腹括ってんだ」
「了解了解。じゃあすぐそっちに行くから場所確保よろしくね」
「うん……『頼むよ』ソウズカ。君の力もあれば心強い」
「それにしても……ついにだね。まさか動くとは思ってなかったよ」
「それについては少しいろいろあってな……思うところとかも含めて」
ソウズカ曰くこちらは単独だが、これ以外でも大きめの団体が動き始めたらしい。人手不足のタイミングなどを狙って動いたはずだったのだが、と疑問に思っていると、ソウズカがさらに情報を追加してくれた。
何でも、センゲンらしき存在が一部の民間に情報を共有して調査に踏み込んだという。
「……全く」
これだから、油断も好きもありゃしない。
想定外に次ぐ想定外だが、運がよければ協力者を増やす手立てにもなるだろうか。