RECORD
Eno.371 杠ことはの記録
001
薄暗い部屋だった。
窓からの光は一切差し込まず、闇があたりを覆っている。
唯一、ディスプレイの青白い光だけが、机に向かう男の顔をぼんやりと照らし出していた。
──ピンポン。
インターホンの音が、静寂を破る。
その音に応じるように、カチリと機械音がして、ドアのロックが外れる。
そっと姿を現したのは、茶髪のセミロングヘアの女性だった。
彼女はおどおどと辺りを見回し、小さな声で呼びかける。

返事はない。数秒の沈黙。
だがその静寂を切り裂くように、部屋の中心、テーブルの上から幽かな振動音が響いた。
視線を向ければ、充電器につながれたスマートフォンが、光を放ちながら震えている。
そこから、くぐもった声が聞こえた。

女性は驚かなかった。
これが彼女にとっての「出社」の儀式なのだ。
ためらいもなく、当たり前のようにそのスマートフォンを手に取った。
窓からの光は一切差し込まず、闇があたりを覆っている。
唯一、ディスプレイの青白い光だけが、机に向かう男の顔をぼんやりと照らし出していた。
──ピンポン。
インターホンの音が、静寂を破る。
その音に応じるように、カチリと機械音がして、ドアのロックが外れる。
そっと姿を現したのは、茶髪のセミロングヘアの女性だった。
彼女はおどおどと辺りを見回し、小さな声で呼びかける。

「もしもし……御薬袋さん、います、か?」
返事はない。数秒の沈黙。
だがその静寂を切り裂くように、部屋の中心、テーブルの上から幽かな振動音が響いた。
視線を向ければ、充電器につながれたスマートフォンが、光を放ちながら震えている。
そこから、くぐもった声が聞こえた。

「いらっしゃい。ことはさん、お待ちしていましたよ」
女性は驚かなかった。
これが彼女にとっての「出社」の儀式なのだ。
ためらいもなく、当たり前のようにそのスマートフォンを手に取った。