RECORD

Eno.582 三月粉雪の記録

犯人はお前だ、という言葉

探偵と聞けば誰もが思い浮かべる言葉。
所謂決め台詞、とでも言うのだろうか。
探偵の一番の見せ場、事件の犯人を告げる時のそれは。
誰かを指し示すその指は。
拳銃とよく似ている。


探偵の推理は、完璧でなければならない。
そのためには、誰もが納得のいく情報と証拠を以て推理しなければならない。
その情報源が不可思議な力や不明瞭な出所であってはならないし、
その証拠が己のみ理解できるものやあるはずのないものであってはならない。
万人が確実に納得のできる真相でなければ、推理を公表してはならない。



何故か?





その指先には、人を殺す力があるからだ。





たとえ、己に一切の法的権力が無かったとしても。
『探偵』という肩書は、一般人よりもその言葉に信憑性を与えてしまう。
「あの人が言ってるからきっとそうなんだ」
「探偵が言うんだから間違いない」
そんなハリボテのような信頼で、周囲や世論さえ惑わせてしまいかねない。

だから、探偵の推理は完璧でなければならない。
その指先が、誰かの人生を曲げ、歪め、奪ってしまう事を覚悟しなければならない。
拳銃の銃口を向け、トリガーを引くのと変わらないのだと。
理解していなければならない。





私の指先からは何度も硝煙が立ち上っている。






私は覚悟を持っている。