RECORD

Eno.77 磯向井 利慕の記録

❖回想録



 そのネット記事を見たのは、小学4年生だったか。
 いつものようにクラスで軽く話して、パソコン室で遊ぼうとなって。初めはゲームでもしようかという話をしていたのだが、開いたPCの小さい記事に目を奪われた。

「あ、これ知ってる」

「うちのお母さんの遠い親戚がこれの被害にあったんだって」

「ちょっと。誰の前でそれを言ってるの」



 皆が自分の事を見た。
 まただ。周りは知っているんだ。

「……僕、知らない」

「だから、これ、一人で見ていい?」



 周りはソッと離れて、別のPCのところに行った。楽しそうな雰囲気が空気ごと引っ張られて、自分の所には重苦しい空気しか残ってないかの様。

 ページを開く。

「酷い悪天候の運行を強行したとされ」

「死者…………」



 そこからは、何がなんだか覚えてない。

「船長、石賀 島嶼トウショ

「依然として、行方不明」



 欲しかった物が、情報が、津波の様に押し寄せて。
 検索の手が止まらなかった。全部を知りたかった。やっと会えた父親と話をするように。

 けれど、出てくる情報は酷いものばかり。
 父親への誹謗中傷。勝手な考察。
 そして、母と自分に対する暴言。

「……なんで」


「なんで、写真まで」



 当然、自分がネットに上げたものではない。
 そこにつけられたコメントは、見るも耐えられない物ばかりだった。

 情報の波が去った後は、何も残らなかった。
 自分でコレなのだから、きっと母も同じ様な目に合っているのだろう。

 きっと、こういった写真に気付いてすぐに引っ越し、安心出来る場所を探し続けたのだ。
 だが、どこも同じだった。人が多い都会ではすぐに写真が上がり、人の少ない田舎では陰湿な仕打ちに合う。

 陰ながらに避けられたのも。
 何度も引っ越しをし続けたのも。
 母さんがいつも辛そうだったのも。
 海の本で泣き出してしまったのも。

「全部、全部」

「父親のせいだったんじゃんか!!」