RECORD

Eno.360 山田 流布音の記録

幕間/『BEGINS KITAMA2025』にて

本番中だ。
パソコンがフリーズした。

再起動すれば治るだろうが、なにせタイミングが悪い。
あと一曲という所。立ち上がりが鈍い再起動は一曲分の時間を要する可能性が高い。
最初の枠で時間超過は影響が大きすぎる。
再起動はダメだ。

ならばどうするかと考えてる所で、舞台袖からスタッフが駆け寄って来た。

「一曲少ない分には休憩時間として消費できます。切り上げてしまっても良いですが、どうしますか?」

やめてしまってもいい。そういう提案だ。

だが………

「…ステージコンセプトからは外れますが、ギターソロやっていいですか?」

コレはわがままだ。詰めが甘かったのもわかっている。

「もちろん、やれるならやりましょう。今はあなたの時間ですからね!」

力強く親指を立ててスタッフは定位置に戻っていった。

さて、マイクをオンにして『私の時間』の続きをしようか。


ー〜ー〜ー〜ー〜ー


終わってしまえば気楽なものだ。
荷物もギターとノートパソコン一台、ケースにひとまとめに出来て身軽でもある。
残りの時間は他の観客とそう変わらない。
早出番の特権とも言えよう。

しかし三会場ってのはどうも選択を迫られる。
利点があるとすると、一つのステージが止まっても他のステージで繋げられる所だろうか。
あくまで個人的な感覚だが、選んで回ると他を選ばなかったようで晴れやかな気分でない。
ならばいっそ、どこのステージも選ばないで裏方の補助にでも回るか。

そんな感じでやってきたYELLOWステージの舞台袖。予定表では最後の演者という事もあり、出番が無さそうな物の片付けが始まっていた。

そんな矢先に事態は変わる。
一曲目を終えて戻ってきたアーティストが急にへたり込んだ。
普通じゃない気がして近場のスタッフに確認する。

「彼って披露するの一曲だけ?」

スタッフは首を横に振る。
コレがトラブルだと理解すれば足が動いた。

まずは彼自身の意向を確認せねば。
私がそうしてもらったように、このステージを止めるか否か。

予定進行不可の危機。
ついさっき経験した。気持ちはわかる。
続けたい意思が見えればやってやろう。
彼のステージを繋ぐんだ。
今日皆から貰った好意、今日皆に返してやる。


ー〜ー〜ー〜ー〜ー


舞台袖に引っ込めば、すぐにそこにあったパイプ椅子に座り込む。
限界と呼ぶにはいくらか余裕あるが、出せるとこまで出した気分だ。ちょっと休みたい。

ぼんやりしていたら、気の利くスタッフがスポーツドリンクをくれた。
そういえば、これは彼が座ってた椅子か。
ふと、壇上を眺める。
彼の見たこの景色にいた私はどう映ったのだろう?救世主?あるいは…⬜︎⬜︎?

運営の最後の挨拶が聞こえる。
波乱があったのは私の周りだけかもしれんが、とにかく無事に終わって良かった、良かった。