RECORD
Eno.1451 西ヶ谷 鏡人の記録
神秘惑乱領域プロローグ・光を灯し、音は護る
神秘を抜かれた謎の死体から連なる、とある以上空間における騒動の終結から数日。
分かたれた区画の一つ、便宜上の呼称・エリア4。
北摩東部を模した、鉄の壁が存在していた場所。
本来なら封鎖されてしかるべきこの場所へ、『光の足』による光速移動で不法侵入。
「…慎一のオッサンとかムジナさん辺りにバレたら大目玉だろうなぁ…」
頭を掻く。
『伝言を聞いた貴方へ。私と話しましょ?』
先ほど自宅に発生していた『滞留伝言弾』。
知っている限り、俺の知り合いに同じ能力で、同じような使い方をしている人間は存在しない。
2つのWが抜け落ちた不完全な伝言。
とはいえ、これを発したモノの正体を考えればそこも問題ない。
東部を構成する模型の一つに凭れ掛かるように座り込む。
古風な市街地の中に有る、どこかの神社だろうか。
…ちょっと罰当たりかね、今度元の構造物を確認して、異変起きてたら謝りに行くか。
『神頼みが嫌いなくせに、罰当たりという概念はしっかり意識してる。
本当に、その辺りはあのころから変わってないわね?』
突然の、俺ではない女の声。発生源は真横。
くぐもって微妙に聞こえづらく、それでいて、何故か懐かしさを感じるような。
『ヒト』であることは認識できるが、ジャミングやノイズのようなモノに塗れ、姿は釈然としない。
「…ハクのアクジキ、タマキのレオノーラにオリヴァー、
俺も完全に忘れてたけど、治療してもらわないまま別れたあの女子の小人。
そいつらに比べると、随分違う見た目だな?」
『いいえ。貴方以外の神秘保有者には私の姿は十全に見えているはずよ』
唯一明瞭に確認できる口元が俺の言葉を否定し、にやりと歪む。
『今の貴方には、『神秘となり果てて貴方と同化の進んだ私』を、正しく知覚することは出来ない。
ま、『神秘意識の分離』なんてありえない事を起こしたこの空間の影響もあって、あなたと私はこうして認識し合えている。
そのうち、私の姿という『真実』を正しく認識する日も近いでしょう。多分ね?』
くつくつと耳障りな、だけどやはり聞き覚えのある笑い方。
脳の奥がチクチク痛む。『コイツ』の言葉の真意は一体何なのか。
「…質問に答えろ。お前が外部的要因で俺に入って来た『音響操作』の意識。
なら、この『光の足』は元々俺の保有していた神秘、という事で間違いないのか?」
『そうよ、正しくは『極光』。それは貴方が覚醒して保有する、正しく貴方の神秘』
「なんで今まで使えなかった?」
『『極光』の神秘を、私が包み込んでうまーく封印していたから。
事情はまだ話せないけれど、貴方がそれに覚醒した時は大変だったから。
色々あって何とか封印した結果、今になって神秘の変異を経て貴方が使えるようになったのは誤算だったけど』
「なんで封印した?」
『覚えていないだろうけど、覚醒時の状況が悪すぎて『極光』による外部被害が出そうだったから。
まあ、管理局周りの人間がうまく処理したみたいね。…感謝しなさいよね?
私が上手く封印してあげたお陰で、北摩に来るまでの貴方は今まで『ただの人間』として暮らせたのだから』
「なんで今まで俺にコンタクトを取らなかった?『伝言弾』が使えるなら、今までも会話ぐらいは出来ていたはずだろ」
『貴方が今までどのような事を見聞きして、感じて、人生を歩んできたかを私は記憶している。
けど、『私』という自我が目覚めたのは今回の、この空間の影響のお陰よ。
そういう意味では『フェイスレス』には感謝してもいいかもね?』
質問に次ぐ質問。色々突っ込みたい事も、聞きたいこともあるが、あと一つだけ。
「なんで今回の件、表立って手伝う気がなかった?」
にや、と『音響操作』は口元を歪める。
『貴方が、『神秘』という心の拠り所の一つを失って、どう行動するかを見たかったから』
『知ってるわよ、西ヶ谷 鏡人。
不思議な事に傾倒する事で、自信がない自分を覆い隠そうとしていた臆病者。
北摩で裏世界や神秘に触れて、不満は有れど特別な力を手に入れた果報者。
そんな人間が、また『特別ではなくなったら』どうなるか、それを確認したかっただけよ。
…思ったよりも強くなってて驚いたけどね。
沢山の友人や心から大切にしたい子が出来て、精神的に成長したのかしら?』
「………はぁーっ、クッソお節介なヤツだなお前…」
立ち上がり、『音響操作』に背を向ける。
「これからお前、どうするつもりだ?」
『変わらないわ。私は変わらず、あなたの神秘として行使される存在よ。
…ま、今後は暇な時に自我を出させてもらうかもだけど。あなたの恋人とも喋ってみたいし♪』
「…今回の件を知らないミクがお前と対面したら驚きそうだな?」
『…ま、今は『今回は新しい力に目覚めるためのパワーアップイベント』ぐらいで認識しておきなさい。
折角思い出した『極光』、ちゃんと使えるようにならなきゃ勿体ないでしょ』
「へいへい」
苦笑いしながら、空間の出口へ歩いていく。
光と音の会話を聞いていたのは、北摩の物言わぬ模型のみ。
分かたれた区画の一つ、便宜上の呼称・エリア4。
北摩東部を模した、鉄の壁が存在していた場所。
本来なら封鎖されてしかるべきこの場所へ、『光の足』による光速移動で不法侵入。
「…慎一のオッサンとかムジナさん辺りにバレたら大目玉だろうなぁ…」
頭を掻く。
『伝言を聞いた貴方へ。私と話しましょ?』
先ほど自宅に発生していた『滞留伝言弾』。
知っている限り、俺の知り合いに同じ能力で、同じような使い方をしている人間は存在しない。
2つのWが抜け落ちた不完全な伝言。
とはいえ、これを発したモノの正体を考えればそこも問題ない。
東部を構成する模型の一つに凭れ掛かるように座り込む。
古風な市街地の中に有る、どこかの神社だろうか。
…ちょっと罰当たりかね、今度元の構造物を確認して、異変起きてたら謝りに行くか。
『神頼みが嫌いなくせに、罰当たりという概念はしっかり意識してる。
本当に、その辺りはあのころから変わってないわね?』
突然の、俺ではない女の声。発生源は真横。
くぐもって微妙に聞こえづらく、それでいて、何故か懐かしさを感じるような。
『ヒト』であることは認識できるが、ジャミングやノイズのようなモノに塗れ、姿は釈然としない。
「…ハクのアクジキ、タマキのレオノーラにオリヴァー、
俺も完全に忘れてたけど、治療してもらわないまま別れたあの女子の小人。
そいつらに比べると、随分違う見た目だな?」
『いいえ。貴方以外の神秘保有者には私の姿は十全に見えているはずよ』
唯一明瞭に確認できる口元が俺の言葉を否定し、にやりと歪む。
『今の貴方には、『神秘となり果てて貴方と同化の進んだ私』を、正しく知覚することは出来ない。
ま、『神秘意識の分離』なんてありえない事を起こしたこの空間の影響もあって、あなたと私はこうして認識し合えている。
そのうち、私の姿という『真実』を正しく認識する日も近いでしょう。多分ね?』
くつくつと耳障りな、だけどやはり聞き覚えのある笑い方。
脳の奥がチクチク痛む。『コイツ』の言葉の真意は一体何なのか。
「…質問に答えろ。お前が外部的要因で俺に入って来た『音響操作』の意識。
なら、この『光の足』は元々俺の保有していた神秘、という事で間違いないのか?」
『そうよ、正しくは『極光』。それは貴方が覚醒して保有する、正しく貴方の神秘』
「なんで今まで使えなかった?」
『『極光』の神秘を、私が包み込んでうまーく封印していたから。
事情はまだ話せないけれど、貴方がそれに覚醒した時は大変だったから。
色々あって何とか封印した結果、今になって神秘の変異を経て貴方が使えるようになったのは誤算だったけど』
「なんで封印した?」
『覚えていないだろうけど、覚醒時の状況が悪すぎて『極光』による外部被害が出そうだったから。
まあ、管理局周りの人間がうまく処理したみたいね。…感謝しなさいよね?
私が上手く封印してあげたお陰で、北摩に来るまでの貴方は今まで『ただの人間』として暮らせたのだから』
「なんで今まで俺にコンタクトを取らなかった?『伝言弾』が使えるなら、今までも会話ぐらいは出来ていたはずだろ」
『貴方が今までどのような事を見聞きして、感じて、人生を歩んできたかを私は記憶している。
けど、『私』という自我が目覚めたのは今回の、この空間の影響のお陰よ。
そういう意味では『フェイスレス』には感謝してもいいかもね?』
質問に次ぐ質問。色々突っ込みたい事も、聞きたいこともあるが、あと一つだけ。
「なんで今回の件、表立って手伝う気がなかった?」
にや、と『音響操作』は口元を歪める。
『貴方が、『神秘』という心の拠り所の一つを失って、どう行動するかを見たかったから』
『知ってるわよ、西ヶ谷 鏡人。
不思議な事に傾倒する事で、自信がない自分を覆い隠そうとしていた臆病者。
北摩で裏世界や神秘に触れて、不満は有れど特別な力を手に入れた果報者。
そんな人間が、また『特別ではなくなったら』どうなるか、それを確認したかっただけよ。
…思ったよりも強くなってて驚いたけどね。
沢山の友人や心から大切にしたい子が出来て、精神的に成長したのかしら?』
「………はぁーっ、クッソお節介なヤツだなお前…」
立ち上がり、『音響操作』に背を向ける。
「これからお前、どうするつもりだ?」
『変わらないわ。私は変わらず、あなたの神秘として行使される存在よ。
…ま、今後は暇な時に自我を出させてもらうかもだけど。あなたの恋人とも喋ってみたいし♪』
「…今回の件を知らないミクがお前と対面したら驚きそうだな?」
『…ま、今は『今回は新しい力に目覚めるためのパワーアップイベント』ぐらいで認識しておきなさい。
折角思い出した『極光』、ちゃんと使えるようにならなきゃ勿体ないでしょ』
「へいへい」
苦笑いしながら、空間の出口へ歩いていく。
光と音の会話を聞いていたのは、北摩の物言わぬ模型のみ。