RECORD

Eno.230 田中 二郎の記録

佐武の記録1

『神秘』
それはなんかよくわからないもの全般を指す。
僕はこれを研究する立場にある。


しかし悔しいことに、科学的に解明するのが難しい神秘も少なくない。
僕はそんな神秘への対抗手段として、一つの案を思い付いた。
実に馬鹿げた案だ。
自分でも何を言っているんだと思う。
だがこれが機能すれば、解明が難しい神秘を無力化することも容易になる。
ではその案とは何か。

『中二病』
思春期特有の「あちゃー」って言動をはじめとする諸々。
この記録では特にファンタジーな妄想の類を指す。


神秘はどうやら『ありふれたもの』と認識されると弱まったり消滅したりするらしい。
もし『ありふれた中二病の症状』として認識させることができたなら、どうだろう。
まあ課題も色々あるが……神秘に関わる者の中に協力的な中二病患者がいるかどうか、というのが一番の

──

着信音に手を止める。
新着メッセージを確認し、溜息。

「……あ~……めんどくさ。」


先輩達の倅が神秘に関わってしまったと連絡が入った。
最後に会ったのはランドセルを買ってやった時だったから、もう十年近く前だ。
当時は随分懐かれていた、しかしだからって自分に振らなくても、と思わないでもない。
まあ先輩達には随分大きな借りもあるから、突っ撥ねることもできないのだけれど。

昔と同じ店──まだあったことに驚きを禁じ得ない──で菓子折りを購入し、軽自動車に乗り込んで久し振りに田中家へと続く道を走った。