RECORD
8/14、寮の義弟を様子見。寮室1702号室にて。
「…何はともあれここまでご足労おかけしました、義姉さん」
マットの下に膝を立てて座る女。
その女と目線を合わせるようにこちらも腰を下ろす。
「砲未くんのいる北摩がどんなところなのかなと思ってね。ついダッシュで来ちゃった。ごめんね?」
堅苦しい義弟の言葉遣いに返答する。
今の義弟が年齢の近い子にはどんな風に接してるか見たかった、その気持ちを胸にしまって。
「つれないなぁ……そんなめーいっぱい目をギラギラさせにきたんじゃないのに」
わかりやすい拒絶、愛想がないのは家族の間柄だから、というのは理解してるが寂しさが募る。
それに今の義弟のプライベートをこじ開けるように詮索する気はない。
しかしどうしても威圧させてるようで、さらにしょんぼりと視線を落とす。
「…友達はできた?砲未」
でも一つくらいは何か聞いてもバチは当たらないだろ。
いや、せめてこれだけは聞きたい。
彼の味方を、仲間とまでは言わない。
近しい間柄がいるのか、それだけは聞きたくて言葉が出た。
その声色自体は軽やかで先ほどまでの話を続けるかのよう。
「その数人、ちゃんと友達?」
私に学費を出してもらってる手前、渋々答えたのだろう。
それでも語り口に拒否する様子が少しずつ消えてくのを感じた。
たった一言でも義弟の唇の動きが強張ってないように見えたから。
「一方的に見られてるのが数人、僕が勝手に見てるのは一人だったけど…多分相互、最後の一人は」
「……言いたいことはあるけど今の君が友達と認識してるだけでよしとしましょう」
肩をすくめてため息を吐く。
顎の裏を親指でぐりぐりと触れつつ義弟は語る。
きっと言葉を選んでいるのだろう。
くわえて私から視線を逸らして集中している様子、今までの目線の外し方は拒否、しかし今は別の物事に集中しているようにも見える。
どうやら決して小さくない出会いがあったらしい、それを知れただけでも十分だ。
「ん?ああいや?」
つい漏れた一言、聞こえてないとしても不快を買ったか視線が痛い。
しかしここはあえて気後れせずに発言を口にした方が嫌悪を鎮めるが多い。
小野乃木砲未がそんな風に育ったそんな、を。
その一部を。
そう聞いた途端、義弟は私の目の前で初めて表情を緩めた。
北摩に来て初めて、どころか一緒に暮らしてたときでも目にしたことがあるか、どうか。
「この寮に来て三日後、クラスメイトと食べたラーメンがまぁ〜美味しくてね、呆気なく僕の苦手が吹き飛んじゃった」
「そう、なんだ」
聞き出す間もなく語る義弟を見たのは久々だった、詭弁も混ざってるが嘘は口にしていない。
…ふと私は視線で義弟に問いかけている自分に気づいた。じゃあ女の子とも仲良くできてるんだね?と。
その視線を、私が瞼を閉じようとする前に彼の声が聞こえる。
喋りすぎたと言わんばかりに彼は怪訝そうな表情を再び私に向けた。
家族と離れて以降、私に向ける見慣れた顔につい少し笑った。

















