RECORD
Eno.414 水貝 弥白の記録
2日目:
「おはようございます、今日はもう患者さんがいるんすね…?」
「どうにも強く抵抗する怪奇が出ていてね。
交渉もできなかったみたいだから…怪我人も増えるだろうな」
既に担ぎ込まれてきた人や自力で戻ってきた人、
それぞれ手当や補給を受けに救護所に集まってきている。
夜勤の人が引き継ぐまもなく俺も手当に加わっていった。
「向こうにまた要治療者か…水貝くん、
ちょっと俺が行くまでに一人で傷の洗浄を先に出来るかな」
俄に人が出入りするようになった救護所で西木さんが
初めて俺1人で患者を担当するよう声をかけてきた。
西木さんは呻いてうずくまる前線スタッフの治療にあたっていた。
「洗浄ですね、やれます!先に行ってます!」
頼まれた先には昨日救護所に来た河島さんともう一人、
それぞれ小さくない怪我で服を汚しながら
互いに支え合いながら待合の椅子に腰掛けていた。
「大丈夫っすか…俺西木さんから先に傷を洗うように言われて、って河島さん?」
「ああ、頼むよってか勝手に水は貰って傷口は洗っちまったからな。
水貝くんはクレリックの履修もしてるんだろ?正直、
西木を待ってる時間も惜しい、まとめて治療をしちゃもらえないか」
「おい、インターンの子にそんな」
「西木はまだ俺達が来てることを知らない。
そもそも来てないってことにすりゃ良い…助けを待ってるやつがいるんだ、頼む」
確かに傷口は洗われていて治癒系の神秘の使い手を待つところまで
彼らは自分自身でも応急の手当をできていた。頭を下げられて助けを求められて、
出来ることを出来ないということも、黙っているのもできなかった。
「わかりました、け、怪我したところをこっち向けてください…」
てのひらを傷口に向け、額を手の甲につけて深呼吸。
徐々に癒やしの光を当てて、傷口を塞いでいく。
こんな大きな怪我を治療することなんて滅多にないから緊張して時間がかかる。
「ありがとう、じゃあ俺達は戻るから、西木をよろしくな」
「ごめんね、無理いって神秘率が上がることさせて」
前線の二人がまた怪我をするようなところへ行こうとしている。
引き止めるべきじゃないのか、傷は塞がっても体力までは戻るわけじゃない。
「だめですって!もう少しちゃんと治るまで休まないと………
なら、せめて傷が開かないようにこれ巻いていってください」
動けるようになった二人は早速出立しようとする、
先程のセリフを思い出せば当たり前のことだ。
膏薬を塗ったガーゼを塞いだばかりの傷に上に当て、
上からネットとテープで固定する。
手が思うように動かなくて少しいびつになってしまった。
「悪いな。なあに、ちょっくら救援に向かってくるだけだからさ」
「そんで西木に仕事を増やしてって怒られよう、か?」
俺の下手な包帯を笑うでもなく、冗談をつきながら二人は前線に戻った。
再び前線に出た二人が、何らかの怪我でこの救護所を通り越して
表世界の救急病院に運ばれていったと知ったのは
3日目になってからのことだった。
苦い夏の葡萄柚③
2日目:
「おはようございます、今日はもう患者さんがいるんすね…?」
「どうにも強く抵抗する怪奇が出ていてね。
交渉もできなかったみたいだから…怪我人も増えるだろうな」
既に担ぎ込まれてきた人や自力で戻ってきた人、
それぞれ手当や補給を受けに救護所に集まってきている。
夜勤の人が引き継ぐまもなく俺も手当に加わっていった。
「向こうにまた要治療者か…水貝くん、
ちょっと俺が行くまでに一人で傷の洗浄を先に出来るかな」
俄に人が出入りするようになった救護所で西木さんが
初めて俺1人で患者を担当するよう声をかけてきた。
西木さんは呻いてうずくまる前線スタッフの治療にあたっていた。
「洗浄ですね、やれます!先に行ってます!」
頼まれた先には昨日救護所に来た河島さんともう一人、
それぞれ小さくない怪我で服を汚しながら
互いに支え合いながら待合の椅子に腰掛けていた。
「大丈夫っすか…俺西木さんから先に傷を洗うように言われて、って河島さん?」
「ああ、頼むよってか勝手に水は貰って傷口は洗っちまったからな。
水貝くんはクレリックの履修もしてるんだろ?正直、
西木を待ってる時間も惜しい、まとめて治療をしちゃもらえないか」
「おい、インターンの子にそんな」
「西木はまだ俺達が来てることを知らない。
そもそも来てないってことにすりゃ良い…助けを待ってるやつがいるんだ、頼む」
確かに傷口は洗われていて治癒系の神秘の使い手を待つところまで
彼らは自分自身でも応急の手当をできていた。頭を下げられて助けを求められて、
出来ることを出来ないということも、黙っているのもできなかった。
「わかりました、け、怪我したところをこっち向けてください…」
てのひらを傷口に向け、額を手の甲につけて深呼吸。
徐々に癒やしの光を当てて、傷口を塞いでいく。
こんな大きな怪我を治療することなんて滅多にないから緊張して時間がかかる。
「ありがとう、じゃあ俺達は戻るから、西木をよろしくな」
「ごめんね、無理いって神秘率が上がることさせて」
前線の二人がまた怪我をするようなところへ行こうとしている。
引き止めるべきじゃないのか、傷は塞がっても体力までは戻るわけじゃない。
「だめですって!もう少しちゃんと治るまで休まないと………
なら、せめて傷が開かないようにこれ巻いていってください」
動けるようになった二人は早速出立しようとする、
先程のセリフを思い出せば当たり前のことだ。
膏薬を塗ったガーゼを塞いだばかりの傷に上に当て、
上からネットとテープで固定する。
手が思うように動かなくて少しいびつになってしまった。
「悪いな。なあに、ちょっくら救援に向かってくるだけだからさ」
「そんで西木に仕事を増やしてって怒られよう、か?」
俺の下手な包帯を笑うでもなく、冗談をつきながら二人は前線に戻った。
再び前線に出た二人が、何らかの怪我でこの救護所を通り越して
表世界の救急病院に運ばれていったと知ったのは
3日目になってからのことだった。