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*diary202507.txt(1)の続きです。*
相談したことについて
そういえば、人魚の姿へ変身できるようになってから気をつけることが増えた。主に、変身を他人へ見せることについて。僕は、今でこそ友達がどんな姿であろうと受け入れることができるけれど、それは裏世界へ慣れたからだ。裏世界に不慣れであったり、抵抗感が抜けない人というのもきっと多くいるのだろう。そう考えると、人目のある場所でみだりに姿を変えるべきではないのではないか。そもそも、裏世界に慣れたと言っても裏世界での常識を身に着けたわけではない。知らないことがまだまだ多くあって、それで……一人で悩んでいても仕方ないと、人に話を聞きに行くことにした。僕は人に話を聞くことが得意だ。

「得意であってほしい。ルポライターのたまご的に……」
扉をノックする音。ガチャリと扉を開け、部屋に入ってくる。
「もしもーし、いるかな? ……そういや名前知らないな。あの~、タヌキさーん? 束大3年の三咲湊ですけど~。ちょっと個人的に……変身のことで相談したくて~」
この男の中で勝手にそう呼んでるらしい。ぼんやりと部屋を見回す。
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>>2840497
「あ、はーい!」
あなたが部屋の入り口を開けると、中から朗らかな返事で何度か見た青年が立ち上がり、迎えてくれました。
「いや~、こないだは教えていただいてありがとうございます。あの時助けていただいた狸です(笑)」
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>>2853531
「ははは、もう大丈夫そうだね。表で学業、裏で依頼となると大変だよね~。まぁ、無理せずにね」
はい、とレジ袋を手渡し。コンビニで買ったお菓子だ。クッキーとかチョコとか。
「で、今回の相談なんだけど。前から聞きたかったことがあってさ。ほら、君よく変身するでしょ。いや、僕が変身したいわけじゃなくて……。うーん、見せたほうが早いか」
そう言うと、足を閉じた。すると、瞬く間にその姿が歪んでいく。
→
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>>2935749
>>2853531
次の瞬間には、全く別のシルエットがそこにあった。ピンク色の人魚だ。
「僕もこういうことができるようになってさ。
で、変身のマナーとか? あるのかなと思って相談したかったんだ。今までいろんな怪奇に会ってきたけど人前で姿を変えることに慎重な人も多くて、気になっちゃって。あんまり人に見せるものでも無いのかなって思ったんだけど、僕そのあたりのことには疎くてさ。相談できる人もなかなかいなくて……。
どう? 変身するときに気をつけてることとか、ある?」
どうやら、変身についてのマナーや慣例について知りたいようだ。
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>>2935885
「えっ? おわあ!!」
貰ったお菓子に気を取られてるうちにあなたの姿が全体的に派手に変わり、ひっくり返りそうになるほど驚きました。
「え?え?ちょ、ちょっと急で何がなんだか……」
~~~
「……変身する時に気を付けてること……?そう言われても、うーん……お、オレはとりあえず、自分の耳や尻尾を隠さないといけないからそうしてますけど……。逆に、こっちだとあんまり隠す理由もないし、まぁいいかな、って……」
「それ、その…… (……し、しまった。何さんか聞いたことがないぞ。)……も、元から人魚?だったんですか?オレみたいに。知らなかっただけで、みたいな……」
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>>2942366
「……急に変身を見せると驚かれるので注意、と」
タイチが驚きから立ち直ったあと、手帳を開きペンを走らせていた。
質問をされれば顔をあげ、答える。
「いや、僕は元から人間だよ。まぁ、詳しいことは僕もわからないんだけど……。
初めて裏世界で実戦をしたときからなんか身体が変になってさ。勝手に姿が変わるようになっちゃって。裏ラウンジでその姿を見せたかどうか忘れちゃったけど……。あの、なんか……らくがきみたいな姿の……。いや、あのときはバカなことばかりしてたから、これ伝えるの恥ずかしいんだけど……」
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>>2948807
>>2942366
少々気まずそうに、手帳に絵を描きそれをタイチに見せた。
おおよそ↑のような簡単な造形のイラストが描かれている。
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>>2948911
>>2948807
>>2942366
「ともかく、それが原因でしばらく裏の束大附属病院に入院してたんだ。そこで神秘率を下げたり色々してるうちに、なんか……こんなことができるようになっちゃって。
まぁ、そんな経緯は今はどうでもいいんだ。この姿になれるようになって、便利なことばかりだし。別に僕は姿を変えることに抵抗は無い。
問題はほら、さっき言ったマナーとかさ。なんとなく、僕が変身していい顔されることって少ないかも、みたいなのを感じてて……。今は人前で大っぴらに変身しないようにしてるんだけど……。
ほら。君、変身のプロじゃないか。そのあたりのこと、聞けばわかるかなーって。……えーと、タヌキさん……、だと不便だな。改めてお互い自己紹介しておいたほうがいいかな。僕は束大3年の三咲湊。変身初心者です。よろしくおねがいします、師匠」
ぺこりと頭を下げた。なんちゃって弟子だ。
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>>2949094
「へ、変身のプロだなんてそんな。オレも言うて2ヶ月ほど前に自分が狸なことを知っただけだし、そんなベテランとかじゃ全然……」
へへへ…… おだてられて、口でこそ謙遜していますが、いい気分になってしまいました。
「……っていうか、同期だったんですか。オレてっきり、もっと大人かと思ってた。ええと、三年の新隈 太一です。でも師匠は名乗れるほど知ってるワケじゃないから、ちょっとオーバーかも。」
「……変身のマナーってことだけど、裏世界ならみんなも気にしないんじゃないかなあ?物騒な協力者の人もたくさんいるし…… ……というか、人魚ってことだけど、それ本当に人魚?なんか……クリオネとかそういうのに見えるな……。」
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>>2965096
「そう? 気にし過ぎかな……。これ全身ピンクだから『大学3年生にもなって全身ピンクってどうなの』みたいな、そういう感じのアレだったかも……」
ファッションかな?
買ってきたチョコを自分もひとつつまむ。
「あぁ、確かに鱗無いもんね。医者は魚っていうよりアザラシの部類って言ってたよ。だからよくみると毛皮だし、ヒレにちょっと爪がある」
ヒレアシを持ち上げる。わざわざ見ようと思わないと気付かないような小さく丸い爪がある……。そこはちょっと動物っぽさを感じるかも。
「そういや、タイチって耳としっぽを出してるけど、動物の形態にはなれるの? 人に化けてるところは以前裏ラウンジで見かけたけど……」
動物つながりで連想したのか、ぼんやりとした疑問。だんだん雑談タイムになってきている。
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>>2978516
人魚姿でヒレ足を持ち上げているのを見ると、動くのは不便そうだな……と思ったとか。
「え、ああ、うーんと…… お、オレ、裏世界で怪奇に襲われた時にびっくりして、この姿になったんだよね。だから、たぶん、この姿がオレの自然体……なんだと思う。管理局の人も、それでオレが狸混じりなんじゃないかってアタリをつけたらしいし。」
「……この前、オレの葉っぱで動物に化けようとして試してみてた女の子がいて……その子が色々失敗してたところを見てたから…… やれる、とは思うけど、ちゃんと狸になれるかは自信ないなあ……。」
「……ところで、その姿って、動くのとか大変そうじゃない?」
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>>2982746
「へぇ、もともとがその姿なんだ。怪奇の姿も千差万別だなぁ。逆に四足歩行のタヌキに化けるのが難しいこともあるんだね。
もしかして、人の姿って比較的化けやすかったりするんだろうか。子供時代に昔話の絵本読んで、四足歩行から二足歩行への変身は難しいんじゃないかとか勝手に思ってたんけど……」
ぼんやり考えている。
「あぁ、これね。もはや二足歩行でもないもんねぇ。でも案外平気なんだよ。尾をくねらせて…、こんな感じで歩けるんだ。これも神秘なのかな?」
尾をゆらゆらと揺らせば、摩擦なんて無いようにすべって移動する。まるでゲームの移動モーションの様。
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しばらく、ダラダラと他愛のない話をしていたのだろう。多々狸がやってきて、ようやく自分が長話をしていたことを認識する。
「あっ…、ごめん。すっかり長居しちゃったね。いやぁ、タイチって話しやすくてさ……。
向こうも僕みたいにこっそり話したいことがあるんだろうし、僕はここらでお暇するよ。残ったお菓子は相談料ってことで、好きに食べてね。話聞いてくれてありがとう! またね~」
人の姿に戻れば、少し気恥ずかしそうにワークショップを後にするだろう。
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「えっ、え、あ、ああ…… ま、またね。」
ああっ、行っちゃった。たぶん行ったとて、彼女とはSURFで連絡取るだろうから…… いえ、これより続きはそれこそ今更。あなたを見送るにとどまるのでした……
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最初は、タイチに話を聞きに行った。人前で変身を披露していたのをよく見かけたからだ。様々に姿を変える様はまさに変身のプロ! すごい!
そんな彼は、変身することについて「気にする必要は無いのでは」と語っていた。正直、随分と気楽な返答で拍子抜けしてしまった。だけど、それによって僕の気持ちが楽になったのも確かだ。最悪のパターンとして、僕の行動は常識が無いと蔑視されることも想定していたから……。いや、これはタイチをそういう奴だと思っているわけではないのだけど、心構えの問題として……。
>>2247635
「ドアの前を通り過ぎることは度々会ったけど、こうやって入るとなると緊張するなぁ……。
し、失礼しまーす」
男が部屋に入ってくる。案内書きを目にすれば、卓上ベルをチリンと鳴らした。
「使 天さんいますか? ちょっと相談というか、聞きたいことがあって。といっても、そんな大した話じゃないんですが~……」
腰低め。初対面での相談事に慣れていないようで、緊張が見え隠れしている。
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>>3112058
「ご指名に預かりました。
カレントコーポレーションの使です」
中性的な声。
テーブルを挟んで向こう側。
応接室の椅子に、いつの間にかひとが座っている。
まるで最初からそこに座っていたように。
頭上には取って付けたような光輪がぷらぷらと揺れている。
「些細なことでも、どうぞ遠慮なさらずに。
大した事ではないがゆえに、こういった場でもないと
話す機会がないといったこともありましょう。
さて、よろしければお掛けになってください」
緊張は見て取れるものの、過度に腫れ物に触るような事もなく。
自分の座る椅子の、向かい側の椅子を、そっと手で指す。
座るか座らないかはあなたの自由だ。
「本日はどのようなご相談でお越しになられましたか?」
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>>3125609
「よ、よろしくおねがいします」
言われるがままに椅子に座る。
「えーと、アメさんって怪奇……ですよね。頭のソレもあるし」
アメの頭上に浮かぶ光輪を指さした。
「あのですね。僕、二ヶ月前に初めて裏世界へ来た人間なんですけど、初の実戦をきっかけにちょっと身体おかしくなっちゃって。裏の束大附属病院に入院して治療受けてたんです。それで、問題だったところは治ったんですが、代わりに……こんなことができるようになっちゃって」
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>>3128736
>>3125609
机の下で足を閉じ、揺らす。すると、その姿は瞬く間に別のシルエットへと変わっていった。ピンク色の人魚のような姿だ。
「……こんな感じで。
この変身能力、退院してから数日間は『便利だな』くらいに思ってたんです。水中もスイスイ泳げるし。それで特に気にせず好きなときに姿を変えてたんですけど……。
僕自身が直接なにかを言われたわけではないんですけどね。周りの怪奇たちとか見てて、もしかして姿を変えるところってあんまり他人に見せるものじゃないのでは、と感じて……。気になって、聞いてまわってるんです。
その、どうなんですかね。裏世界での、というか怪奇の常識として、変身についてマナーがあるのかなって。もしかして、デリケートなことだったりするのかな、とか。それほどじゃなくても、人間で言う着替えみたいな感じだったら外で変身するの恥ずかしいな~、みたいな」
「眼の前で変身しといて何ですが」と最後に付け加えた。
つまり、変身することについて自分の知らないマナーや常識があるのか聞きたいということらしい。
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>>3128792
>>3128736
「ふむ。ええ、私は怪奇です」
頭上の光輪。おもちゃのような翼。
それらの特徴は、怪奇でなければコスプレの類としか言えず。
裏世界に親しんだ怪奇であるからか、
目の前で起こった変身にも、特に動じたふうではなかった。
「マナー、というより、そうですね。
あまり裏世界に関わって間もない方々は
たとえば変身のような、神秘の関わる事象がすぐ近くで起きることに
どうしても驚かれてしまう、
ということを気にする方は多いかと思われます」
変身に限らず。
怪奇との戦闘で用いられる異術、
或いは、表世界では法に反する現代的な武器であっても。
非日常的な現象が身の回りで起きる、という事に、
どうしても心がついていかない、というケースは少なくない。
「おそらくは、ですが。
人前で姿を変えることをしない怪奇の方々は、
無闇に他者を驚かせたくない、という方が多いのでしょう。」
「アザーサイドコロニストがそうであるように、
機関に属する者の多くは、表世界の住人との融和を図っている。
外見的なギャップは、どうしてもそれを妨げるものですから」
もちろん、また別の理由があって、怪奇としての姿を隠している。
そういった者も少なくはないだろうが。
一般的な例としては、そういったものが普遍的と判断できる。
「ただ。私がそうであるように、
隠さない者にもまた、隠さないだけの理由があるのでしょう。
そうですね……着替えの例で言うのであれば、
誰かが急に西洋甲冑であったり、ステージ衣装で現れたりしたら
それは、どうしてもびっくりしてしまうでしょう?」
「けれど、見せ方を間違えなければ、隠すほどのものではない。
姿を変える、というのは、そういうものかと。
これは飽くまで、一怪奇としての見解ですけれどね」
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>>3130278
「あ~……」
「そうか、人間が驚くから配慮している、というのはそうなのかも……。そっちには意識向けられてませんでした。そっかぁ」
口元に手を当ててうんうんとうなづいた。納得している。
「裏世界で過ごしてみて、更にはこうして神秘を扱えるようになって、慣れちゃってましたね。そりゃ慣れてない人は驚くか……。自分が平気だから他人も平気だろうみたいな勘違いというか。僕が知らない怪奇側の事情があるのかと思ってましたけど、知らなかったのは人間側の事情だったかも」
様々を思い返し、反省している様子だ。
「元の姿をずっと現すのも、それはそれで早く慣れてもらいやすいというのはありそうですよね。やっぱり、僕が思っているより"姿が変わる"という事自体にショックを受ける人は多いのかも。もちろん、変化前との差異の大小や周囲との関係、環境の違いとかで、各々の事情は変わると思いますが。
少なくとも、相手が裏世界の事柄やこういった姿の変化について慣れてるかどうかくらいは確認してからにしたほうが良さそうですね。いや、実は先日もいきなり変身したせいで驚かれちゃって。その人は変身慣れしている方だったので、変身へのショックというよりは不意打ちで驚かせる形になっちゃったって話なんですが。そういうパターンもあると思うので……」
ははは、と少し困ったように笑う。
「僕、どうにも新しいことができるようになるとついはしゃいでしまう質でして。人に迷惑かけた後に、こうして反省することが多いんですよね。いや、お恥ずかしい限り……」
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>>3162757
「慣れというものは、仰る通り、個人差があるものですから。
すぐには受け入れられない方と同じように、
早期に適応できることもまた、決しておかしな事ではありません」
物事を判断する時、
無意識に自分を基準としてしまうのも、また。
ごくありふれた、誰にでもあること。
各々が気を付ける事こそすれ、強く咎められるような事ではない。
「とはいえ、そうですね。
他者が自分と決して同じ認識の上にあるわけではないこと。
少なからず、他者の変身に驚く、という感性があること。
それは、姿形を変えるような神秘と生きる者として
それとなく、意識していく必要はあるかもしれません」
「それも、少しずつで大丈夫かと。
許すということは、迷惑を掛けてしまった相手のすることですから
それは私の決められることではありませんが…
後からでも、きちんと反省ができるなら。
物事に、遅いということはそれほどありませんので」
たとえば、そうと知らずに、神秘による外見の変化に
大きなショックを受ける質の相手の前で変身してしまう。
それは、もしかしたら取り返しのつかない事かもしれないが……
幸運にも、今のところ、そういった深刻な事件は起きていない。
であれば、これから気を付ければいいだけの話であって。
「神秘に関しては、特に。
新しい事ができるようになったことを、純粋に喜べる。
そういった気質は、恥じるものではない。あってよいことです」
「神秘へのイメージは、極力はポジティブなものであった方がいい。
とはいえそれは他者からの印象にも同じことが言えますから。
そういう意味でも、他者から見てどう見えるだろう、という点に
少しだけ気を遣ってみてください」
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>>3168250
アメの言葉を、うんうんと頷きながら聞いていく。
「新しいことができるようになると、新しい注意事項が増えますねぇ。昔、カメラを買ってもらった時にはしゃいでそこら中を撮りまくって、人を無断で撮るのは良くないと注意を受けたのを思い出しました。いや、もちろん僕が悪いんですけど、『無断で見るのは良いのに、撮るのはダメなんだ』というのが、新しい感覚だったというか……」
「自分が変身できるようになる前は、"変身するときに何を気をつけるべきか"なんて、考えたことなかったんですよね。でも、僕の周囲にいる変身能力を持つ人々は当然、意識的にも無意識的にでも何か考えている……と、思うんです。なんだか、衝撃的というか。『僕が思っているより、周りの人々はずっと色々なことを考えて動いているんだ!』というのを目の当たりにした感じというか……。言葉にするとそりゃそうだろって話なんですが、まぁ新しいことができるようになってそんなことを肌で実感するというか……。
あ~、原付免許取った時にも同じこと思ってたなぁ、これ……。はじめて原付免許試験の問題集見た時は……」
だんだん話が脇道にそれていっている。アメと目があって、あっと話題を戻した。
「いや、ありがとうございます。アドバイスいただけて助かりました。こういうの、なかなか人に聞ける機会が無くて」
最初にあった緊張はすっかり抜けて、笑顔で話を続けている。
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>>3369723
>>3168250
ふと、その姿が歪む。再び人の姿が表れた。
「この疑問、思い切って他の人にも聞いてみようと思います。きっと、人それぞれ答えが違うだろうし。
今後話を聞く時は、『変身する時のマナー』というよりは『変身する時に注意したり、気をつけてることはある?』くらいが聞きやすいのかもなぁとか、発見もあったし。やっぱり、こういうのは自分で悩むより思いきって聞いてしまったほうが良いですね。
今後はなるべく、こっそりと姿を変えますよ。隠すほどのものではないけれど、今の僕は『この人なら見せて大丈夫』という感覚がまだ掴めてませんからね。
自覚無しに人を傷つけてしまうのが、一番嫌ですから……。僕はなにかとやらかしがちなんですけど……」
はははと笑った後、はぁとため息がひとつ。
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>>3369873
>>3369723
「知らないことは、正しく慮ることもできないというもの。
変身に関わる物事だけでなく、
進んで他者の視点を知ろうとするのは、よいことだと思いますよ。」
人は、どうしても間違う時はあってしまうもの。
けれどあなたはそれを、仕方ないとはしたくないのだろうし。
であれば、自分の役目は前に進もうとするその背を押すこと。
そう判断して、掛ける言葉はそのように。
「カルチャーショック、とでも言いましょうか。
新しい発見に純粋に衝撃を覚えることができるというのは
私からすればかわいいものですが……」
「ともあれ。お力になれたのであれば、私としても何よりです。
また何かお困りのことがあれば、
いつでもお気軽にお越しください。」
「それでは。お帰りの際は、お気を付けて」
相談は一区切りついたかな、といったところ。
あなたが相談室を後にするなら、天使は席を立って見送るだろう。
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>>3441185
その話しぶりに、この人は見た目よりも長生きしているのだろうか、と疑問がよぎった。しかし、聞こうとして飲み込む。ここでまた本題から逸れた話をしていては仕事の邪魔になるだけだろう。
「この能力とも、うまく付き合っていきますよ。裏世界も神秘も、その存在を知ってからは驚くことばかりだけど、まさに世界が広がったようで。そういう意味では、嬉しい驚きです。
表世界の人々とも、裏世界の人々ともうまくやっていきたいですね。知ることは寄り添いの一歩だと、僕は思っています。だから、たくさん知っていきたい」
「もちろん、無遠慮にアレコレ聞くわけにもいかないので難しいところですけどね」と付け加える。人々、人間と怪奇のこと。この男の中で、もはやそれ自体に大きな区別は無く。
「へへ、今回はありがとうございました。またお世話になることもあるかもしれません。その時は何卒よろしくおねがいしますね。いやぁ、表も裏も、世界はわからないことばかりなもんで……」
はにかみながら、そう言った。
聞きたいことは聞けた。そろそろいい時間だろう。椅子から立ち上がれば、帽子を取って小さく礼をする。そのまま、静かに部屋を立ち去った。
︙
次に、学生相談室を訪ねた。裏世界初心者勉強会のすぐ隣にある相談室だ。今までこういったものを利用することがなかったから、緊張したなぁ……。
相談に乗ってくれたアメさんは、僕の悩みに真摯に答えてくれた。神秘を用いて「姿を変えること」がどういったものなのか、というのを知れたのが大きな収穫だった。
昼過ぎ頃、螺千城入口付近。
喧嘩騒ぎが始まり、収まるまでをぼんやり眺めていた。別段、珍しい光景でも無いだろう。
「もしかして、螺千城って人と待ち合わせしたりお茶するのには向いてないんじゃないか?」
また別のいざこざが始まった。
「選択肢を間違えたか……」
喧嘩を眺めながら考えている。
どうやら待ち合わせをしているようだ。予定時刻よりずっと早い。人を待つついでに色々と見て回っている様子。
︙
[北摩湖][螺千城]
ヲグ
[Eno.78]
2025-07-10 17:29:42
No.3531517
「お~ 祭りもあるんだねえ~……」
壁に張られた紙を見ながら、
白くてでかいのがぼんやりと佇んでいた。
誰かを待つように、そのまま。
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>>3531517
しばらくして、
「やっほ~」
やってきた。いつしか牧場で見せた人魚の姿だ。
「来てくれてありがとね。……螺千城の空気感とか、大丈夫? 選んだ僕が言うのもなんだけど平気?」
スラム街の雰囲気が漂う周辺を見回す。
「よかったら、このまま死骸地まで行こうと思うんだけど……。そこにいいお店があるんだ~」
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[北摩湖][螺千城]
ヲグ
[Eno.78]
2025-07-10 22:22:03
No.3546755
>>3546618
「やっほ~~~。
大丈夫だよ~。僕は大概のことは大丈夫な自信があるぜ。
色んなものを呑み込める器の持ち主と評判です。」
「案内には預かっちゃうぜ……のすのす。
死骸地ってやっぱ生物の骨で出来てたりするのかなあ~」
︙
>>3546755
「ここだよ」
住宅地と商店街の混成エリアである死骸地。そこにある小さな飲み屋に入る。店員と客の8割が怪奇という以外は表世界の大衆酒場と差は無い。少ないながら、人間の客もいるようだ。
木製テーブルといくつかの座布団が置かれたお座敷席に案内されれば、ミナトがテーブルの隅に置かれていたメニューを渡してくる。
「なににする? 相談に乗ってもらうんだし、おごるよ」
メニューには、一見すれば表世界でも見たような品々。ビール、オレンジジュース(無果汁)、唐揚げ、卵焼き、サラダetc……。そしてそれらの間に時々挟まる、表世界では見慣れない商品名。裏世界の食べ物を使った料理もあるようだ。
「僕はオレンジジュースとからあげもらおうかな」
店員へ注文を伝える。しばらくすれば、注文した品々が運ばれてきた。
→
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>>3551114
>>3550986
>>3546755
「んでさ、どう? 変身するのって」
ジョッキに注がれた無果汁オレンジジュースを飲む。
「……質問が漠然としちゃったな。ほら、変身できると必要に応じて姿を使い分けるでしょ? そういうとき、どんなことを気にして使い分けてるのか、とかさ。他にも、変身する時に気をつけていることとか聞きたいな。
僕さぁ、姿を変えるのに裏世界特有のマナーや常識があるのかと思ってたんだけど、なんだかそういう訳じゃ無さそうなんだよね。姿を変える時の心構えって人によりけりっぽくてさ。だから、こんな感じでいろんな人に聞いてみてるんだ。
ヲグって、人間との関わりがすごい丁寧な感じがするんだよね。少なくとも、僕みたいに人前で突然変身して驚かせることって無さそう」
驚かせたことがあるらしい。のんきに話しながら、届いたからあげを食べている。
︙
[][]
ヲグ
[Eno.78]
2025-07-10 23:49:25
No.3551842
>>3551114
「ほおほお……」
目新しい光景だが、あまりしげしげと見て好まれるものではないだろう。表情の形はそう動かさないままに、道を歩いていく。
飲み屋の大きさを見て、
もっと小さくなってくればよかったか。と思う。
入る際にちょっとはぎゅうっと身を絞った。(1.8mぐらいに)
「わ~い、おごりだあ~。
うーん、どうしようかなあ。……」
オレンジジュースの文字をなぞっている。……無果汁か……
「……じゃあ冷奴でお願いするよお~」
運ばれてきた食事を、そのままズモッ。と毛の中に取り込み、……
→
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[][]
ヲグ
[Eno.78]
2025-07-11 00:00:40
No.3552425
>>3551359
「……ふむ…… なるほど、そういう質問かあ。
色々気をつけてはいるけど、複合的で中々言い表しにくいね。
まあ、人間ちゃんは変化にびっくりしちゃうものだからねえ。僕も人前で姿を変えることはなくて、どこかで密かに変えたりする……
……そう、びっくりさせるか否か。大きく言えばそれじゃないかな。
勉強会とか、他にもカレントや管理局に依頼報告に行くときとか…… 『明らかに人の方が多そうな場所』では、僕は人の姿を保つようにしてる。びっくりさせちゃうだろうからね。牧場みたいな混沌とした場所は例外だけれど。
これでもちょっと漠然としちゃう気はするね。もうちょっと詳しく行く上で、聞きたいんだけれど…… 驚かれたっていうのは、どんな場所で、どんな時だったの?」
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>>3552425
>>3551842
「変わった食べ方をするねぇ」
からあげをつまみながら、食事を取り込むヲグを見る。話を聞きながらふんふんと頷いている。
「あぁ、やっぱり。ヲグが変身するところって見たこと無いなとは思ってたけど、僕の気のせいじゃなくてちゃんと気配りしてたんだね。
僕、姿を変えられるようになってしばらくは結構はしゃいでて、場所も考えず姿を変えてたんだ。ヲグに変身を見せたのもちょうどその頃でさ。
でもしばらくして冷静になってみると、ヲグに限らず他人が変身するところってあんまり見たこと無いなって。だから、『着替えみたいなものなのかな』って思ったんだよね。だったら、僕ものすごい恥ずかしいことしてるなって……」
できることが増えるとはしゃぐ悪癖があるようだ。話すところによると、後々になって反省するのもお約束らしい。
→
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>>3573235
>>3552425
>>3551842
「驚かれたと言っても、別に怪奇が苦手な人に見せたわけじゃないよ。変身が上手な知り合いがいてさ、その人の部屋にこんな風に相談しにいったんだ。相談内容を話すついでにこの姿になってみせたら、まぁひっくり返るレベルで驚かれてね。僕がいきなり姿を変えたのも悪かったんだけど……」
「本人の気質もあるだろうけどね」と付け加える。
「ともかく、変身能力に理解があってもあんなに驚くんだ。神秘に苦手意識がある人間相手に姿を変えて見せたら、とんでもないことになるかもな…って感じてさ。
今の僕にとって、姿を変えるのは姿勢を変えるくらい簡単にできることだけど……。その何気ない行動で取り返しのつかない事態になるかもって考えると、怖いじゃない?」
再びジュースに口をつける。「駄菓子の粉ジュースみたいな味だな……」と感想をつぶやいた。
︙
*以下メッセージへ移行*
最後に、ヲグに話を聞かせてもらった。ヲグは僕の友達の中で、変身前後での容姿の差異が特に大きい。きっと、気をつけていることも多くあるのだろうと踏んでのことだ。しかし、相談場所に螺千城を選んだのは失敗だったかも知れない。ヲグを待っている少し間だけで、眼の前でチンピラたちの喧嘩が3回も発生した。恨むなら僕じゃなくて金がない僕の財布を恨んでほしい。
やはりヲグも変身をする際には色々と気を使っているようだった。学生相談室でも聞いた話だったが、やっぱり「他人がどう感じるか」というの気にしている。
以降、僕はなるべく他人に姿を変える様子を見せないようにしている。人の姿であれば最後まで人のまま、人魚の姿であれば最後まで人魚のまま。人目のない場所で、こっそりと姿を変えるようになった。

「今では、姿を変えるところを見られるのが恥ずかしいまである。
気を使うのはともかく、そんな意識まで持たなくていいんだろうけどね……。あぁ、『変身って着替えみたいなものなのかな』って悩んで『それは違う』って教えてもらったのに、結局そういう意識になっちゃったなぁ」
サーカス
[束都ドームシティ][ダンスショーホール]
ミナト
[Eno.477]
2025-07-01 02:53:08
No.2844749
夜の街を歩いていたら、壁に貼られたポスターを見つけた。束都ドームシティで行われるサーカスのポスター。僕は誘われるように、チケットを買ってダンスショーホールへと向かっていった。
サーカスを見ていた。
着飾った象が玉に乗り、ライオンが火の輪をくぐる。これでもかと化粧を施した道化が、今度は炎の息を吹いた。演目が成功するたびに、周囲の客は熱狂して立ち上がり、歓喜して拍手を繰り返した。まるで僕以外のすべてが、このサーカスのために仕込まれた舞台装置なのではないかと錯覚するほどだった。
非日常だな、と思った。見られることに特化した、演出された非現実。裏世界でも感じられないような、常識からの逸脱。
サーカスの演目はどれも目を見張る出来で、もしかしてこれらは"神秘"なのではないかと疑うほどだった。しかし、こうやって東京のど真ん中で公演を行っているのだから、これらはすべて"説明可能な技術"であり"高度な科学"なのだろう。
「……」
サーカスが終われば、そのまま出口へと向かう。他の施設も営業終了間近なのだろう、周囲には親子連れの姿が多くあった。父親と思しき人物が遊び疲れて眠った子どもを背負っている。
『ご来園ありがとうございました』
女性の声のアナウンスが流れた。出口付近で、猫のきぐるみが帰る客に手をふっている。
(どれも人間じゃなかったりして)
暴いてやりたいな、と思った。サーカスも、アナウンスもきぐるみも。だけど僕はもう大人だから、そんな気持ちを飲み込むことができる。きぐるみに笑顔で手をふりかえした。きぐるみは喜んでいる仕草をした。
︙
[束都ドームシティ][ダンスショーホール]
ミナト
[Eno.477]
2025-07-01 02:54:33
No.2844805
>>2821372
「『星影のフェスティバル』……? なんかすごいおしゃれな名前だな。束都ドームシティっていろんなショーやってるんだなぁ」
︙
[束都ドームシティ][ダンスショーホール]
[Eno.792]
2025-07-01 03:09:55
No.2845563
>>2844805
「『星影のフェスティバル』は影とプロジェクションマッピングを使ったダンスが見どころの舞台だよ。今日のサーカスが気に入ったのなら、きっとお気に召すはず」
どこからか声がした。あなたが話しかけた方角かはわからなかった。
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[束都ドームシティ][ダンスショーホール]
ミナト
[Eno.477]
2025-07-01 03:22:23
No.2846011
>>2845563
「へぇ、それは良いことを聞いたなぁ。スマホで上映時間チェックしてみるか。……?」
聞き馴染んだ声に返事をした。ふと、視線の先の人物の声では無い気がして、周囲を見回す。姿はすっかり帰路につく来場者たちに馴染んでいて、結局誰の声だったのかわからなかった。
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[束都ドームシティ][ダンスショーホール]
三咲ミナト
[Eno.477]
2025-07-15 16:42:06
No.3794855
「見れなかったなぁ、『星影のフェスティバル』。キャンプと予定が被っちゃって……。最近は特にイベントが多くて、色々と見逃すことが多いね」
束都ドームシティ、ダンスショーホールのラウンジ。ソファに座りながら、壁に貼られた『星影のフェスティバル』のポスターを見ていた。記載されている公演日が過ぎ去り、その役目を終えたポスターだ。明日には剥がされていることだろう。
『星影のフェスティバル』――プロジェクションマッピングとダンスを組み合わせた舞台。なんでも、投射された映像の中にダンサーが入り込んでいくような、繊細なダンスが見どころなのだとか。ネットで評判を調べてみたところ、非常に好評の様子。
「すべてを見れたら、すべてを知れたらいいのに。人の身じゃそうはいかない。もどかしいねぇ」
持っていた缶コーヒーを揺らす。
壁には様々な舞台のポスターが貼られていた。チャンピオンズ・リズム主演のダンスショー、ミュージカル『星空のカンパニー』、ステラ・ダンサーズの公演、『エターナルムーブメント』、『ムーンライト・レボリューション』、『エターナル・ウェーブ』etc……。
「永遠と星空。ずいぶんと人気がある題材なんだな。手に入らないものを求めるのは誰しも同じってことか」
ポスターを眺めていると、東口側の廊下から人々が流れてきた。また、どこかの舞台が公演を終えたのだろう。
「またサーカスでも見に行こうかな。噂の、目が痛くなるほどのキラキラ衣装っていうのも気になるしね」
コーヒーを飲み終える。空缶をゴミ箱へ捨て、ダンスショーホールを後にした。
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着替えで思い出したが、以前サーカスを見に行った。あんなに不思議なことがたくさん起こって、どれも神秘でないというのだからすごいものだ。
僕は何が神秘で何が神秘でないのか、未だにきちんと理解できていない。能動的理解ができていない、と書けばいいのだろうか。初心者勉強会でシャボン玉を飛ばしたときも思ったことだ。シャボン玉は科学的に”解明された存在”だけれど、その理屈を説明されたところで僕には本質的な理解ができていない。”皆がそう言っているから、そういうことにしている”だけだ。僕の扱う神秘の術のほうがまだ理解できている存在だと思う。

「うーん、書くのが難しいな……。僕が馬鹿って話じゃないとは思うんだけど……」
そうだ、僕がどうやって祝福をかけているのかをここに書いておこう。
1、神秘の通りを良くするために、体の力を少し抜く。
2、相手にどうなってほしいかイメージする。(ここの流れは宗教学特別演習で習ったことと同じ。ネガティブなことを考えると呪いになってしまうので気をつける)
3、指先や手のひらにだけ力を入れる。そうすると、神秘が力を入れた場所に集中する。
4、集中した神秘をぎゅっと押し出す。そのまま、相手に薄い布をふわっと被せるイメージでかけてあげる。
これが広まったら、僕の神秘は解明されて消えるのだろうか? よくわからない。
無軌道なBBQ
「風情があるねぇ。いやぁ、贅沢なもんだ……」
打ち上げ花火を見ながらジュースを飲んでいる。
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「いやぁ、こっちこそありがとうだねぇ。いいもの見せてもらった……。もしかして、僕これで夏全クリしたんじゃないの?」
花火が終わった後、残ってる肉と野菜とパンをもらいもぐもぐ食べ始めた。
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「えっ、唐揚げ!? 僕も僕も~!
あっ、前に買ったときと同じフレーバー! 塩麹の方、まだ食べてなかったからうれし~。ありがとね~」
唐揚げ単品で食べている。おいしい。
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無軌道なBBQという集まりがある。waveDで告知を出している、色々な人が集まってBBQをするイベントだ。
思えば、単なるBBQと称するのが申し訳ないくらいに良質な品々が用意されていた。焼き肉乗せたパンとか、チーズとか、フィッシュ&チップスとか……。これが無軌道と言われる所以なのだろうか。
ちょうど、機関からの依頼で心身ともにキツくなりはじめて(それでも金欲しさにコツコツ仕事をしてしまうのは金欠大学生の悲しいサガだ)疲弊していたころだったから、この集まりにはとても助けられた。表世界の幸せみたいなものをギュッと濃縮したようなこの会で「あぁ、表世界って良いところだな」としみじみ感じたものだ。裏世界に慣れてきて、だんだん辛いところが見え始めた段階でもあったから、よりそう思えた。
バイクの免許を取ることにした
将来のことを考えて、普通二輪免許を取ることにした。2025年7月現在はまだ教習所に通っている最中だ。「夏休み中に免許が取れれば」なんて考えていたけれど、夏休みの教習所は学生でごったがえしている。考えることは皆同じってことだね……。
所内でバイクに跨っていると、「人魚の姿だったらバイクには乗れないな」なんて考えたりする。僕にとって、バイクに乗るには人間である必要があるのだ。
僕の技術はまだまだだけど、それでも運転をするのは楽しい。また、ひとつ新しいことができるようになった。表世界で、人間の姿でもまだまだ新しいことを楽しめるのだ。
悩んだけど、ネガティブなことも書いておく。これは僕の記録だから、どうせ僕以外誰も読まないし。書けば、少しは気が楽になるかもしれない。
セイレーンとの戦い

ITEM:湿った羽毛
セイレーンの残骸から回収したなんだか湿った羽毛。
セイレーンとの戦いは強く印象に残っている。思えば、明確に怪奇を”殺した”と実感したのはあれが初めてだった。害しているのだから、死ぬこともあるだろう。当然のことだ。残骸と化した敵性怪奇から、目的のものを剥ぎ取る。
慣れてしまえるな、と感じた。慣れれば簡単なものだ。裏世界の歩き方、敵性怪奇との戦い、神秘の扱い。そうだ、初めて原付に乗った時もこんな感じだった。はじめはおっかなびっくりで、でも一ヶ月も続ければ難なくこなせた。”人は慣れる生き物である”。まったく、ドストエフスキーは偉大だ。
でも、きっと、僕みたいな一般人にとってそれはよくないことなのだろう。講師たちも心配しているようだ。
裏世界で会う皆も、こうやっているのだろうか。僕と同じように戦って、僕と同じように怪奇からなにかを奪っているのだろうか。戦場で知り合いに会うことは少ないから、あまり想像がつかない。
[東部学生区][東部裏講義棟]
ミナト
[Eno.477]
2025-05-29 14:15:32
No.800106
「おっと、おつかれさま〜。
……あんな年下でも、実は僕より戦闘に長けてたりするんだろうか? わかんね〜、人生で戦うことなんてなかったしなぁ…。銃なんてゲーセンのコントローラーでしか持ったことないんだよ、こっちは…」
全然知らないことばかりの裏世界での戦闘について戸惑いを隠せずにいる。
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[東部学生区][東部裏講義棟]
灰原
[Eno.1015]
2025-05-29 14:24:16
No.800272
>>800106
「えっ!?いや違います!!」
「……あ、えと。僕もその、講義とかいろいろ……
受け始めたばかりで。依頼をこなして、その、
襲われる前に逃げ帰ってきたっていうか…………」
勘違いを受けたくないのか全力で弁明している。
「……戦う、機会なんて……
ない方がいい、と思いますよ、ほんとに。僕もやりたくない……」
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[東部学生区][東部裏講義棟]
ミナト
[Eno.477]
2025-05-29 14:36:29
No.800980
>>800272
「そーなの?」
灰原の全力の弁明に目を丸くしている。裏世界ですれ違う人々はみんな自分より腕が立つと思っていた様子。
「僕、数週間前に偶然裏世界に迷い込んじゃってさ。まぁ、それ自体はいいんだよ。裏世界の風景は見たこと無いものばかりで興味深いからね。
でも、そこから戦闘を行うまでになるとは思ってなくって…。さっきの実習も出てきたレーザーガンがけっこう迫力あってさぁ…。
もしかして、君も同じ感じ? 最近裏世界のことを知ったタイプ?」
自分と同じタイプの一般人なのだろうかと、灰原を見ている。
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[東部学生区][東部裏講義棟]
灰原
[Eno.1015]
2025-05-29 15:00:27
No.801803
>>800980
「そうですよお。……そう、そう、同じです。
確かに興味深いとは思いますけど、物騒なのはいやだ。
最近来て、それも裏世界のことなんか何もわからないのに、
いきなり武器持って戦えってのも変な話でしょう」
肩を竦める。
あなたの視線に臆さず心の内を吐いていく。
「でも、……でも、だから。
知り合いとかも同じように依頼が来てて、戦ってる、
って思うと。複雑というか……わ、わかるでしょうか」
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[東部学生区][東部裏講義棟]
ミナト
[Eno.477]
2025-05-29 17:05:56
No.807538
>>801803
「そう……だよねぇ!?」
なんか改めて気づいたようだ。一般人に戦えというのは相当無茶な要求だということに。あれよあれよと言う間にこんなことになっていたので忘れていた。
「友達も巻き込まれてるの? そりゃ、災難だな。僕は裏で知り合いに会ったのは、今のところ全然…。表の大学内で見たことあるなぁって顔を数人見たくらいで…。
そりゃ、友達も戦闘させられるかもって可能性があるなら気が気じゃないか。僕もまだ、裏で戦ったのはチンピラや酔っぱらいみたいな怪奇くらいだけど、それでも十分怖かったもんなぁ」
最近の経験を思い出す。怪奇としてはそれほど強くない相手でも、等身大の人間の姿をしたものが襲いかかってくるというのは十分恐怖だ。
「……僕、束大3年の三咲 湊って言うんだ。バイトでルポライターやってて…。えーと、君は多摩科連の学生?」
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[東部学生区][東部裏講義棟]
灰原
[Eno.1015]
2025-05-29 17:23:21
No.808210
>>807538
「怖い。不安になります、やっぱり……
でも、戦いに慣れられそうもないし、慣れたくもないし……
…………人の姿した怪奇も、出る、らしいですからねえ」
想像すらノイズになるほど嫌気が差していて。
同意を示すように力強く頷いた。
「大学生……三咲さん、ですか。
僕は、はい、多摩高専の一年で、灰原依田と申します。
…………ここの講義は前から受けてて。だから……
……上手くできたらって思ってたんですが。
武器ひとつでやる気って変わらないものですね、やっぱり」
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[東部学生区][東部裏講義棟]
ミナト
[Eno.477]
2025-05-29 18:12:09
No.810898
>>808210
「裏に関わっちゃったら、避けては通れない道なのかもね。こんな講習があるって事自体、必要があるからなんだろうし」
灰原を見る。参ってるなぁ、と少し心配している。
「ん~、まぁ、でも…。ほら、裏世界って面白いところじゃないか。僕、色々見て回ってたけど不思議で興味深い場所がたくさんあったよ!
そうだ、西部の大和通りにあるゆるりんそうげんとか見に行った? あそこはなんというか…すごくゆるいよ。怪奇も出るけど弱いしゆるいし…。
あっ、そうそう。裏の北摩湖も中に深海みたいな場所があってさ。不思議な生き物がたくさんいておもしろかったな。ムラヤマ自然保護区には見たこと無い果物がたくさん実ってる場所が……」
灰原を元気づけようとしているのか、裏世界の訪れて面白かった場所を喋り始めた。
「自衛手段があったら、そういう楽しい場所を色々と見て回れるじゃないか。それを楽しみにすれば、戦闘に対するモチベーションも上がると思うな。敵を排除するための力じゃなくて、自分が自由に歩くための力っていうか、なんていうか…」
こう話すのは、ミナトの裏世界に対する探究心によるものだろう。当然、この男も裏世界については知らないことがほとんどだ。その言葉には楽しげな冒険心と、無自覚な無責任さが含まれている。
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[東部学生区][東部裏講義棟]
灰原
[Eno.1015]
2025-05-29 18:50:35
No.812620
>>810898
「…………」
あなたの話に、相槌をひとつ、ふたつ。
俯きがちだった顔が少し上がって、表情をじっと捉える。
瞳の奥に、微かな光がある。
「自由」
並べられた単語のひとつを復唱した。
「……確かに、面白いものはたくさんあります。
さっきはね、パズルが空を飛んでいたんです。びっくりするでしょ?
そういう商品なのかなって一瞬疑いましたもの」
「……うん。行ってみたい。ちょっとワクワクしてるんです。
知らない場所は、気になる。
自由に歩くためには……力が要りますものね。
使わずに済むのが一番だと、しても」
︙
[東部学生区][東部裏講義棟]
ミナト
[Eno.477]
2025-05-29 20:13:57
No.817907
>>812620
「空飛ぶパズルなんてあるんだ。まだ見たこと無いな。探しに行ってみようかな」
灰原と目があった。少しは元気づいただろうかと微笑む。
「僕はずっと前から神秘や怪奇に興味があったんだ。もちろん、裏世界を知る前はこんな場所があるなんて知らなかったし、神秘のこともオカルトとか都市伝説とか呼んでたけどね。だって、僕らの世界には文字通り"神秘的"なことがたくさんある。それらすべてが偶然の産物や作り話だなんて、それこそ信じられない話だろ?
僕、知らないことがあるの嫌なんだよ。この裏世界だって、偶然出会わなきゃ死ぬまで知らないままだったかもなんてゾッとするね。
だから、僕にとってこれは千載一遇のチャンスなんだ。灰原も色々見て回るといいよ!」
もちろん僕だって戦闘は嫌だけどね、と付け足しつつ。
「……こんなふうに話してたら、だんだん裏世界探索したくなってきたな。今から色々見て回ってこようかな! ついでに、明日も公欠にしてくれって大学に頼んでみようっと!
じゃあね~…っと、そうだ。これ僕のSURFのID! なにかおもしろいことあったら連絡してね~」
SURFのIDが書かれたふせんを、灰原の肩にぺたりと貼った。話していて裏世界探索への意欲が上がった様子。るんるんな足取りで裏講義棟の廊下をあとにした。後ろ姿だけでも、その機嫌の良さがうかがえる…。
︙
[東部学生区][東部裏講義棟]
灰原
[Eno.1015]
2025-05-29 20:43:39
No.819693
>>817907
「ふ、あははっ、わかります。
知らないままで終わるなんて耐えられない。
……いいね、そういうの、とっても、いいと思います」
今度は、さっきよりもっと強く頷いた。
いつの間にか気分も回復しているみたい。
───僕らの世界には文字通り"神秘的"なことがたくさんある。
「大学の人困っちゃいますよお。
って、わ、」
付箋を貼られた。その中身を剥がして見てから、
ふは、と小さく笑みが零れる。
「……気を付けてくださいね~、危ないんですからっ!!」
その背に見送りの声をかけて、見えてはいないだろうけど手を振った。
︙
今なら、以前灰原が言っていたことがわかるかもしれない。当時の僕は全く見通しが甘かった。あのときの言葉は嘘ではないし裏世界が面白いというのは確かに今も思っている。しかし、あの時は未知に対して心を躍らせてばかりで、裏世界での戦闘行為がこんなにも日常に入り込むなんて考えもしなかった。
僕は、皆に危険なことはしてほしくない。だけど、それは心のなかで思うだけだ。いかにもな理由を付けた他人に己の行動を妨げられる苦痛を、僕は知っている。
神秘氾濫事件
深夜、ようやく寮の自室へと帰ってこれた。
数時間前、バイト帰りに緊急のメッセージが届いた。事態が事態なだけに無視するわけにもいかず、そのまま裏世界でドンパチやってきたのだ。人魚に姿を変え、仲間に神秘の祝福を施し、神秘の力を得たカメラで敵性怪奇にダメージを与える。緊急とはいえ、やることはいつもの戦闘と変わらない。
疲れた身体を引きずって、なんとかベッドに横たわる。
「慣れちゃったな」
人間は慣れる生き物だと言ったのは誰だったか。以前は嫌だった人型怪奇相手の戦闘でも、今では構わずカメラを向けることができる。
……いや、さっき倒したアレは本当に怪奇だったのだろうか。
「つかれた」
頭の中からくだらない疑問を振り払った。人間だの怪奇だの、今更どうでもいい話だ。僕は敵と戦って、武力を持って排除した。それだけ。
歯も磨かず、風呂にも入らず、そのまま泥のように眠った。
︙
そういえば|

「……」

「いや、なにもなかった。僕はいつも通りに仕事をしただけだ」
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*入力した文字を消している*
カメラについて
強いて言えば、カメラが「敵を倒す武器」になってしまったな、と思った。
もともと、僕にとってカメラは”暴くもの”であり友愛を表すものではない。地元にいたころ数少ない友人に「撮ってよ~」なんて言われたこともあったが、全部断っていたと思う。そもそも、あんまり人を撮ることが好きではないのだ。「普通の人間を撮って何が面白いんだ? データ容量の無駄遣いじゃないか」なんて、昔の僕なら言うだろう。……今でも、そういう気持ちが無いわけじゃない。
僕自身が撮られることも、そんなに好きではない。カメラを向けられるとドギマギしてしまうし、笑顔もうまく作れない。写真写りも悪い。
今までカメラに触れていた時間が長いから、戦闘時であっても危なげなく扱えるだけ。撮影が上手いわけじゃない。そもそも、敵性怪奇を攻撃するときはシャッターを切っても撮影データは残らないし。
初めてカメラを買ってもらったときは、もっと素直な気持ちで色々なものを撮っていたんだけどな……。
こう書いていくと、今の僕は裏世界に関して文句が多いように感じる。あれだけ渇望した”神秘的な”世界だというのに。これもある種の慣れか。はたまた世界が広がり、同時に苦労も増えたということだろうか。
けれど、もはや僕の生活から切り離すことはできないのだろう。僕はどの扉が裏世界に通じているのかすっかりわかるようになってしまったし、知ってしまった以上見て見ぬふりをして生き続けることは不可能に近い。
それに、僕がこうして穏やかに過ごせているのは裏世界を知ったからだ。
それまでの僕は所謂「あぶないヤツ」だった。
僕は神秘の存在を信じていたけれど、表世界ではそれは”無い”ものだ。無いものを有ると言い続ける僕を、人は白い目で見るようになった。
大学生になるころには僕の”オカルト語り”も随分と落ち着いた。就職のことを考え始める歳になったし、もしかしたら本当は”無い”のかもしれないと疑い始めたからだ。物心つき始めた頃から長く信じ続けていたことに疑問を持つのは苦痛だった。
僕はずっと嘘つきにされていた。はじめて神秘に出会ってから、裏世界へ訪れるまで、ずっとだ。
そんな僕にとって、裏世界の存在は平穏に生きるため必要な要因なのだ。
いつか、僕に神秘の術をかけたという女怪奇とも再会する日が来るだろうか。
もしあるのなら、そいつの面を暴いて、その神秘を白日のもとに晒してやりたい。それでその女怪奇が神秘解明され消滅すれば、僕は理解と納得ができる。嘘つきにされたことへの復讐を果たせる。その生命を持ってして、裏世界を知らずに苦しんでいる神秘被害者たちに真実を教えてあげられる。
僕にはそれをする権利がある。
当然、神秘の情報を表世界に漏洩させたらタダでは済まないだろう。でも、僕の手元には特殊なカメラがある。怪奇の姿になって裏世界中を探して回れるし、手元のスマートデバイスは表世界のインターネットと繋がっている。今の僕には、それができる。
でも、怖くもある。神秘管理局を敵に回すこともそうだけれど、もっと別のこと。
思えば、神秘を暴きたいと望んでばかりの人生だった。束大に入ったのだって、この大学がオカルトや妖怪伝承の類いに明るいからだ。あの女怪奇と出会っていなければカメラにだって興味を持っていないし、上京もせず地元の大学に通い今とは全く違う人生を歩んでいたはずだ。
女怪奇の存在は、もはや人生の核となっている。それを失うと、僕はどうなるのだろうか。
勉強会で「自分の根幹を覆す存在に出会ってみたい」なんて話をしたことがあるけれど、僕はすでに覆された人生を歩み続けているのだろうな。
この祝福には感謝している。この力のおかげで、非力な僕でも裏世界で命を落とさず冒険ができている。
この祝福のせいで、僕の日常に戦闘という行為がより深く入り込んでしまったのは皮肉なことだなと思うけれど。人魚の姿になって他者に祝福を与えることについてもね。彼女が僕にしたのと同じようなことを、僕は仲間たちに対して行っている。
願わくば、僕の前に姿を表さないでほしい。僕も、彼女を探さない。
これが今の僕ができる、最大限の寄り添いの形だ。