RECORD
Eno.361 ジャンヌ土岐マリアムの記録
人を好きになる資格
始まりは、女学院の聖堂での出会いだった。
そこでお互い「命に等しい、大切な存在」を喪った者同士だと知って、
だからこそバディを作れない者同士だと知って。これも何かの縁かと思いサーフを交換した。
その後日、ふな祭りに出かけた。鈴菜を喪った直後と一年後では
全く行く気になれなかったお祭り。二年を過ぎた今年の五月に行ったその先で
私はその少女と再会した。全くの偶然だったが、気づけば声をかけていて。
そうして、私は久しぶりに誰かを親しみを込めた呼び捨てで名前を呼べた。
お互い大切な相手を作らないもの同士だと判っているから。
それに甘えることを許してくれたから。
そこからしばらく、私は再び交友関係を持つようになっていく。
異変に巻き込まれて裏世界を訪れてしまった人や新しく管理局に配属された人。
メタフィジカについて情報を共有する心装部のみんな。
神秘武器つながりで出会えたアーセナルのみんな。
女学院のEクラスで出会えたみんな。
少しずつ交友関係を広げていけて……その中で「親しみを込めた呼び捨て」で
呼べる人がまた増えて。
気付けば炎狼に対して「仲間と共に在れたから出せた力」などと言っていた。
きっと……キッカケはあの時、ふな祭りの夜だったんだろう。
あの時に甘えてもいい関係をもらえたから。
だから、私は少しずつ前を向いていけるようになり始めたんだ。
その上……同じ傷を持つ者同士だからと、私に吸血することを許してくれた。
大浴場での会話を覚えている。身体を大事にしている理由を。
亡き親友を思うからこそずっと大事にしている、自分の身体。
それに傷をつけあまつさえ魂を分けてもらう行為を……許してくれた。
ふな祭りの時に築いた関係が、だからこそ魂を分けてもらう行為に繋がった。
その血はとても甘美で、きっとこの先一生忘れられない味になるのだろう。
もう、私はその時点で十分想いを抱いていたのかもしれない。
気付けば私は、一緒に宿泊施設付きのプールに一緒に行こうと誘っていた。
そして……私の呪いの一部を、解いてくれた。
小さい頃、吸血衝動のなすままに幼稚園の友達にかみついたとき、私は自分を呪った。
子ども同士のケンカということにして取り繕った両親から、
「これから、お前はその衝動と戦い続けなくてはいけない」と言われて
私の出生の秘密を教えてもらった。
今でも覚えている。自分の中にそんな穢れたものが流れていると知った時の
絶望感と嫌悪感を。だからこそ、私は「ヒーロー」を目指していた。
その呪いを……少しでも、解いてくれた。
「命を繋ぐための、貴賤のない、大切なこと」だと。
表情には出さなかったが、少し泣きそうだった。
ずっとずっと呪いだと思っていたこの衝動。
欲望のままに行動してはいけないのはもちろんだが、けれど絶対的な嫌悪を
もって憎み続けるべきものでもないと思えるようになって。
本当に、泣いてしまいそうだった。
そんな言葉をくれた相手を抱きしめたくなった。
そうして、やっと気づいたんだ。
「私は、奏が好きなんだ」と
特殊な関係に甘えることを許してくれた。
交友を広げていくキッカケをくれた。
最も傷をつけたくない身体に傷をつけることを許してくれた。
私を縛る罪の鎖を解いてくれた。
奏が日常を楽しく過ごし、想い人が食べられなかったものを食べていきたいと
言えば無性にそれを叶えたくなってしまった。
誰かを想い続ける姿の美しさを教えてくれたその顔を笑顔にしたくなった。
そうして、奏のことで頭がいっぱいになり始めて。
──その日、またあの「悪夢」を見た。
管理局の人が死んでいく。人質の人が死んでいく。鈴菜が、私の腕の中でこと切れる。
その後日に最悪な情報を聞くことになって。
そうして私は自らを嘲笑する。
「笑えるな……あれだけのことをして……未だに禍根を潰すことが出来なかったのか……」
「ハハハ……ハハハハハ……アッハッハッハッハ!! もう笑うしかないな! なんて無様だ、なんて醜態だ!」
「一番守りたかった相手を守りも出来ず! それだけのことをしながらみすみす敵を見逃しただと!?」
「傑作だ! 最っ高の傑作だ! 笑い死んでしまう程の、最高で、最低で、最悪な、クソのような話だ!! アーハッハッハッハッハ!!」
「ハハハハハ……ハハハ……は……」
「死ね……死んでしまえ……。貴様は、苦しんで苦しんでその末に永劫の地獄に落ちてしまえ……!!」
それはまるで、前を向こうとする私に対して
「お前がそんな夢物語を歩めると思っているのか」
「お前に人を好きになる資格なんてない」
と断罪しているようだった。
私には、奏を愛する資格なんて一切ない。私は……この胸の想いを秘めながら
過ごさなくてはならないだろうな
そこでお互い「命に等しい、大切な存在」を喪った者同士だと知って、
だからこそバディを作れない者同士だと知って。これも何かの縁かと思いサーフを交換した。
その後日、ふな祭りに出かけた。鈴菜を喪った直後と一年後では
全く行く気になれなかったお祭り。二年を過ぎた今年の五月に行ったその先で
私はその少女と再会した。全くの偶然だったが、気づけば声をかけていて。
そうして、私は久しぶりに誰かを親しみを込めた呼び捨てで名前を呼べた。
お互い大切な相手を作らないもの同士だと判っているから。
それに甘えることを許してくれたから。
そこからしばらく、私は再び交友関係を持つようになっていく。
異変に巻き込まれて裏世界を訪れてしまった人や新しく管理局に配属された人。
メタフィジカについて情報を共有する心装部のみんな。
神秘武器つながりで出会えたアーセナルのみんな。
女学院のEクラスで出会えたみんな。
少しずつ交友関係を広げていけて……その中で「親しみを込めた呼び捨て」で
呼べる人がまた増えて。
気付けば炎狼に対して「仲間と共に在れたから出せた力」などと言っていた。
きっと……キッカケはあの時、ふな祭りの夜だったんだろう。
あの時に甘えてもいい関係をもらえたから。
だから、私は少しずつ前を向いていけるようになり始めたんだ。
その上……同じ傷を持つ者同士だからと、私に吸血することを許してくれた。
大浴場での会話を覚えている。身体を大事にしている理由を。
亡き親友を思うからこそずっと大事にしている、自分の身体。
それに傷をつけあまつさえ魂を分けてもらう行為を……許してくれた。
ふな祭りの時に築いた関係が、だからこそ魂を分けてもらう行為に繋がった。
その血はとても甘美で、きっとこの先一生忘れられない味になるのだろう。
もう、私はその時点で十分想いを抱いていたのかもしれない。
気付けば私は、一緒に宿泊施設付きのプールに一緒に行こうと誘っていた。
そして……私の呪いの一部を、解いてくれた。
小さい頃、吸血衝動のなすままに幼稚園の友達にかみついたとき、私は自分を呪った。
子ども同士のケンカということにして取り繕った両親から、
「これから、お前はその衝動と戦い続けなくてはいけない」と言われて
私の出生の秘密を教えてもらった。
今でも覚えている。自分の中にそんな穢れたものが流れていると知った時の
絶望感と嫌悪感を。だからこそ、私は「ヒーロー」を目指していた。
その呪いを……少しでも、解いてくれた。
「命を繋ぐための、貴賤のない、大切なこと」だと。
表情には出さなかったが、少し泣きそうだった。
ずっとずっと呪いだと思っていたこの衝動。
欲望のままに行動してはいけないのはもちろんだが、けれど絶対的な嫌悪を
もって憎み続けるべきものでもないと思えるようになって。
本当に、泣いてしまいそうだった。
そんな言葉をくれた相手を抱きしめたくなった。
そうして、やっと気づいたんだ。
「私は、奏が好きなんだ」と
特殊な関係に甘えることを許してくれた。
交友を広げていくキッカケをくれた。
最も傷をつけたくない身体に傷をつけることを許してくれた。
私を縛る罪の鎖を解いてくれた。
奏が日常を楽しく過ごし、想い人が食べられなかったものを食べていきたいと
言えば無性にそれを叶えたくなってしまった。
誰かを想い続ける姿の美しさを教えてくれたその顔を笑顔にしたくなった。
そうして、奏のことで頭がいっぱいになり始めて。
──その日、またあの「悪夢」を見た。
管理局の人が死んでいく。人質の人が死んでいく。鈴菜が、私の腕の中でこと切れる。
その後日に最悪な情報を聞くことになって。
そうして私は自らを嘲笑する。
「笑えるな……あれだけのことをして……未だに禍根を潰すことが出来なかったのか……」
「ハハハ……ハハハハハ……アッハッハッハッハ!! もう笑うしかないな! なんて無様だ、なんて醜態だ!」
「一番守りたかった相手を守りも出来ず! それだけのことをしながらみすみす敵を見逃しただと!?」
「傑作だ! 最っ高の傑作だ! 笑い死んでしまう程の、最高で、最低で、最悪な、クソのような話だ!! アーハッハッハッハッハ!!」
「ハハハハハ……ハハハ……は……」
「死ね……死んでしまえ……。貴様は、苦しんで苦しんでその末に永劫の地獄に落ちてしまえ……!!」
それはまるで、前を向こうとする私に対して
「お前がそんな夢物語を歩めると思っているのか」
「お前に人を好きになる資格なんてない」
と断罪しているようだった。
私には、奏を愛する資格なんて一切ない。私は……この胸の想いを秘めながら
過ごさなくてはならないだろうな