RECORD

Eno.270 猫の記録

猫の記憶20

思っただけのものを殴りかいたメモ用紙だ




夏休み。
地元へと帰った。
家族の事を、家の事を知らなかったから、知ろうと思った。

違う。あの時聞こえた、公園の声に怯えたからだ。
かこから、増えるかもしれない”家族”の話を聞いたからだ。

だから。私は。


皮を剥ぐ。ゆっくりと。

墓の前。妹は死んだのだと、現実を見に行ったのだ。
だから、もういないのだと。

消えたのではなく、死んだのだと。


結局、何もわからなかった結局、墓参りなんてしなかった
山の奥、虫の声がうるさかった私を見る周囲の視線がうるさかった

あの家の子かね。生きていたんだ



本当は。

聞こえてた。家が噂されているのも。
妹が色々言われているのも。
耳をふさいで聞こえないふり。
目を閉じて見えないふり。

猫になりたい貴方に寄り添い、いい姉であろうとした。
姉の代わりに。

結局それも無駄だった私には理解できなかった
私は手を伸ばせなかった伸ばさなかった

手を伸ばした妹の最後を。


皮を被る。

いいこである様に。
普通であるように。
姉のように
妹のように


本当は。
大人は嫌いだすきだ

家出した時に私を見つけてくれた人は、先生だった。
先生の話してくれる、化石の話とかが好きだった。
でも、ずっと一緒は無理だと知った。
迷惑のかかる前に、私は出ていった。


家族は嫌いだすきだ

小さい頃、まだ誕生日を祝ってくれた頃。
母の作ってくれる唐揚げが好きだった。
父が休みの時作ってくれる、ソーセージが入ったカレーが好きだった。
お祭り好きな妹とひっそりお祭りに行った時に見た笑顔が大好きだった。
こんな自分に優しくしてくれていた姉が、好きだった。


ただ。楽しかった思い出が、嬉しかった思い出が。
そのきらいを邪魔している。



一番嫌いなのは己なのだけれど。

全部から、逃げるために、家出をしたのだ。
家族から、過去から、自分から、視線から、声から。

皮を被る。

日常。
誰も知らないところ。
出来た友達は優しくて、いい人だ。
部活の先輩や仲間たちも、楽しい人ばかり。
気になる人が出来た。
結局、自分に自信がなくて、想うことをやめた。

皮を剥ぐ。

馴染みすぎないように。目立たないように。
いつでも逃げ出せるようにしている、自分がいる。


結局。
私は色んなことから逃げている。
見える現実から。
きっと。

昔から期待に応えられないのだから親の目にすら入らなくなった

家族を知る。現実を見る。

見た先、私はきっと何もしない。
何もできない。
妹に会えたとして、私は彼女の求めるような家族ではないだろうから。

だから。全てを吐き出して。
皮を剥いで。


家族を自分を知らなくてはいけない己の罪を自覚しなければならない



メモはそのまま捨てられた。