RECORD

Eno.346 海狛 呪理の記録

​───それは酷く、浮かされたような熱だった。

借りている秘密基地の一角。
そのベットの上であっという間に過ぎ去っていた催しの記憶を辿る。

きっと今の自分で迎えることの出来る、最後の体育祭。
後悔のないように、ちゃんと最後を飾れるように目いっぱい頑張った。自分のことに無気力なアタシにしては上出来なぐらい。
応援だって執拗なぐらいした。
アタシなんかの声援に期待してくれるヒトが居てくれたら。
競技にも全部出た。
それを望んでくれるヒトがいたから。
本気で勝利を目指した。
組が勝利を求めてたから。

挙げれば結局、他人ばかり。
こういう所がダメなんだろうなって思う。思うだけ。
直そうととしないクセに。

そういえば。
得点発表の時、緊張でいやに身体が震えた。
あの時の感覚は身体の内側からの熱に晒されている時の感覚に近いものだった。
リレーの時もそうだ。
月待から渡ってきたバトンを掴んで、ただ前を目指して駆けている時も同じような熱を感じた。狂おしいぐらい熱さを感じるのに、なぜだか不快感がない。
おかしな熱。

熱いのはずっと嫌い。
いつだって熱はアタシを呑み込まんと渦巻いてる。
でも、あの熱にだったら呑まれていいって思えてしまった。
………他人の感情に引っ張られすぎてるだけかも。


「あ」



そうだ、集合写真。
デバイスを開いて改めて確認しよう。

「……ふ」



「たのしそうに、しちゃってさ」



バカみたいな笑顔。
この笑顔も見納めかな。見納めであってほしい。

「…………あーあ



思うな、思っちゃいけない。
零すな、言葉にするな。
わかってる。
わかってる、けど。

「……おわりたくない、なぁ」



零れた。
いっか。
誰もいないし。

さてアタシは片付けなきゃいけない問題が山ほどある。
ひとつずつ、丁寧、確実に。
ちゃんと垣根を絶とう。
もう二度と夢なんて見ないように。