RECORD

Eno.32 不藤識の記録

record. 『十鬼夜行の鬼ごっこ』

――自己像幻視autoscopy

 浮季草さんが、アレと裏呉院学院の敷地内で鬼ごっこをする契約を結んだ。
 勝てば月待よすがを取り戻す。
 負ければ一生このまま。
 そういう誓いを立てた本気のお遊び。

 事前に話し合った上で、浮季草さんの事情もあり、協力者は人数を絞って呼び寄せた。
 舞坂先生、草薙一振、確井政則、海狛呪理。それと、若干来るかどうか怪しかった不知火京介。
 常に裏呉院にいるユイは、最初から作戦に組み込む前提でこちらもカウントしつつ。このメンバーで鬼ごっこが始まった。
 その後、三人ほど乱入者が居たけれど、そこはそれ。<rt>自己像幻視</rt>autoscopy<rb></rb>にも少なからず人望(?)があったということで。

 とはいえ、鬼ごっこの内容について語ることは然程ない。俺がやっていたのは、相手の手札の推察及び全員への連絡。つまり司令塔としての役割と、相手を確実に捉えるための罠、切り札の管理。
 俺自身が何かしていた訳でもないし、俺の功績もほとんど無いから、内容は割愛する。


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 結論を述べると、鬼ごっこには勝利した。
 結果として無事によすがを取り戻すことができたし、自己像幻視autoscopyは鏡の世界に返すことができた。
 これでまずは一安心。問題は未だに山積みだけれど、よすがが返ってきただけで、嬉しかった。
 みんなもよすがの無事を喜んでいたし、よすが自身も周りからどう見られているかを改めて理解したことだろう。
 これでもずっと卑屈になるんだったら、俺がずっと側にいてあげて、どうにか矯正しないと。絶対に死なせないように、ずっと見守らなきゃ。

 ただ、他にも問題はあって。
 乱入者の話。一部の人達は、自己像幻視autoscopyが消えると分かった途端に戦意を喪失、どちらが生き残っても良いものとした。
 要するに、人の基準で悪事を犯した怪奇に対して、犯行を見逃したということ。それ自体は罪にならないけれど、これを黙秘した場合は犯人蔵匿罪に該当する可能性がある。
 犯罪云々は自己像幻視autoscopyを知った段階で調べた話だ。裏世界のルール的にも、ガイダンスに従うならあの怪奇には対処するべきな気がするんだけど、彼女たちは自己像幻視autoscopyを見逃そうとしていた……気がする。
 あくまで推察でしかないから、これがただの杞憂であればいいんだけど。
 もしこの推察が本当なら……裏世界ではあんまり信用しない方がいいのかもしれないな、と思う。
 今後は注目していかないと。次かないとは限らないから。
 ただ騙されていただけならいいんだけど……


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 怪奇は怪奇。人間とは構造が違うこと。
 そして、神秘は自分たちに危険を及ぼす場合もあること。
 それだけは絶対に忘れないようにしよう。
 よすがを守るためにも。