RECORD

Eno.227 朧 戒の記録

顕現

暗闇が苦手だ。
何故苦手なのかは判らなかった。
わかろうともしなかった。
なんとなく怖いと思っていた。

全部、全部、何もかも、忘れていただけだった。
自分に都合よく。心を守るために。
閉じた心は歪みを作った。
歪んだ心は次第に大きくなり、肥大していった。

暗闇
化け物
置き去りの友人
極限の恐怖

凝縮した歪みは全てを隠して閉じ込めた。
最初から綻んだままで。

そうした歪みは時が経ち勢いよく全てが決壊する。


きっかけは、今から一年程前だったと思う。

路地裏、人気のないその場所で突然の出来事だった
奇怪な影が揺らいで、頬を何かがかすっていくのを感じた。
瞬間、得体のしれない恐怖に襲われた。
足がすくんで、動かない。
今なら、何故かわかるがその時は何故だかわからなくて
ただひたすら早鐘を打っていた。
急激な眩暈に目がくらむ。

風を切る音がして首筋に何か触れるような感覚
血の気が引くと同時に『死』を実感する
刹那怒りが湧きあがった。理不尽すぎると感じたのだろうか。
湧き上がる怒りは運よく(悪かったのかもしれないが)歪んだ心と呼応した。

身体の内から湧き上がる、ナニカ。
内なるナニカがもう一度首筋に触れる寸前
鈍い金属音が鳴り響く。
目の前に現れる拘束具をつけた巨大な鬼のようなナニカの腕。
目をこらしてみていると、その鬼のようなナニカは拘束をひきちぎり
刃物を持つ化け物(の、ようにみえた)を掴んで引きずり、叩き……
そうして化け物の刃はどんどん曲がり、折れ、動かなくなるまで執拗に殴り続けた。
化け物が霧となって散っていくまで。


この日、俺の中に天津甕星 (あまつみかぼし)が生まれた。