RECORD
Eno.763 天堂アヤメの記録
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私は、生き物の死に対して強い感情を抱くことが出来ない。
昔はもう少し、何か感じていたと思う。
初めて人を斬った時の夜、気味の悪い感覚に襲われて寝れなかったのを覚えている。
返り血を不快に思う時期も、確かにあったと記憶している。
けれど今は、斬ることになんの抵抗も無い。なんの感情も浮かばない。
喜びも、悲しみも、怒りも、楽しみも……これといった感情を、見出すことが出来ない。
食事の際に、命を大切にしている彼の真似をしているけれど。
それでもちゃんと、私は命に向き合えているのか分からない。
そもそも、命を奪う事に何も感じない時点で向き合えていると言えるのかも分からない。
人であれ、怪奇であれ、意思を持った相手を斬っておいて。
私は、やっぱり何も感じない。
いつか、表世界での普通の生活が長くなれば取り戻せるのだろうか。
人らしい感覚を、捨ててしまった何かを、取り戻せるのだろうか。
……きっと、完全には無理なんだろうなとは感じている。
どう足掻いても、私の手は……血濡れた、殺人鬼の手だ。
貴方は、私のことを強いというけれど。
……誰よりも弱い人間だから、普通であることを辞めちゃったんだよ。
命を頂くということ
ここ最近、スマホで動画サイトをよく見るようになった。
以前からたまに環境音ASMRを聞いたりもしていたが、
最近は料理動画なんかを眺めて作れそうなものは作ったりしている。
自分にこんな趣味が出来るとは思わなかったが、
これも良い変化なんだろうなと考えていた。
今日も今日とて、ベッドに寝転がりながら料理動画を眺めていて。
そんな中、狩猟をした獲物を調理するといった趣旨の動画を見つけた。
「…………」
その動画では、実際に獲物を捉えた瞬間なども映っており、
命を頂くという事について考えさせられるような内容になっていた。
コメントを眺めると、色んな意見があった。
命に感謝しないといけないとか、動物が可哀想だとか、
本当に様々な意見が交わされているのを見た。
「……やっぱり、何も感じないや」
人によってはショッキングかもしれないシーンを
含んでいたのは分かる。恋人なら喜びそうかな、とも思った。
けれど自分は、結局何も感じなかった。
捕らえられた獲物を見ても、獲物に止め刺しをする瞬間を見ても、
驚くほどに心は凪いでいて、
「こうやって狩りをするんだ」以上の感想が浮かんでこなかった。
もし、自分が普通の人だったのなら。
何も知らないまま高校生になれたのなら、
この動画から何かしら感じ取ることが出来たのだろうか。
狩猟という行為に対して、何か考えを持つことが出来たのだろうか。
今となっては、もう分からないことだ。
私は、生き物の死に対して強い感情を抱くことが出来ない。
昔はもう少し、何か感じていたと思う。
初めて人を斬った時の夜、気味の悪い感覚に襲われて寝れなかったのを覚えている。
返り血を不快に思う時期も、確かにあったと記憶している。
けれど今は、斬ることになんの抵抗も無い。なんの感情も浮かばない。
喜びも、悲しみも、怒りも、楽しみも……これといった感情を、見出すことが出来ない。
食事の際に、命を大切にしている彼の真似をしているけれど。
それでもちゃんと、私は命に向き合えているのか分からない。
そもそも、命を奪う事に何も感じない時点で向き合えていると言えるのかも分からない。
人であれ、怪奇であれ、意思を持った相手を斬っておいて。
私は、やっぱり何も感じない。
いつか、表世界での普通の生活が長くなれば取り戻せるのだろうか。
人らしい感覚を、捨ててしまった何かを、取り戻せるのだろうか。
……きっと、完全には無理なんだろうなとは感じている。
どう足掻いても、私の手は……血濡れた、殺人鬼の手だ。
貴方は、私のことを強いというけれど。
……誰よりも弱い人間だから、普通であることを辞めちゃったんだよ。

