RECORD

Eno.427 大狼拾希の記録

0/7:夏の暮れ

昨今では温暖化がどうだの、秋がなくなっただの、
色々と言葉は聞くが実際に夏がどこで終わるのだろう…と考えるとよくわからない。

日付に大きな意味はない。
ただ、暑さは1つの目安にしようと考えた。

母の胎内で初めて感じた外の気配。
それは外は随分と暑いのだなという面白みもない感覚だった。

だからこそ、外に出たその時感じた感覚は印象深かった。
急にめっちゃ寒いじゃないか…と。

……。
だからこそ、強引に引き戻すにはそのタイミングがいいなと…そう考えたのだと思う。
考える脳もない。身体もない。そこに立ち尽くし、止める。
それが自身の役割。名は体を表す。今の自分にはそれしかできない。

革新的な変化をもたらすことはない。
しかし、何かしら大きな意味はきっとあるのだろう。
それが彼にとって良いか悪いかはどうでも良かった。

自分は、仮初の日常に意味など見いだせない。

けれども、………それなら何故、彼の提案を拒んでしまったのだろうか。
そして、どうして今更同じように繰り返そうとしているのか。
彼の力を借りれば簡単だったはず。けれどそれをしなかった。
そう…したくなかったのだろうか。自分のことながらよくわからない。

戻ろうとする意味は何だ?為すべきことがあるから?
じゃあ、何故今こうなってしまっている?

「もう疲れたんでしょ。■■■■■■」



幼い誰か少女の声。
どこかから届く電波のようにそれは聞こえてきていた。
どこか暗い深い迷路の奥からたった1人。
呼びかけるようなその声に導かれていってしまった。

残された自分が何なのか、言葉で表すならきっとそれは……『本質』だ。

……。
その時が来た。

引き戻すには随分と、様々なものを抱えてしまっている。
これでは前回と同様に、そう上手く事は運ばないだろう。
しかし、だからこそ。離れすぎないように引き戻す必要はある。

期間を空けてしまった以上、揺り戻しは強いものとなる。
それが目的だったとはいえ、細かな記憶にも影響が出るのはあまり望むところではない。

―――……何が…?揺さぶりをかけて、
醒ますのが目的だったはずでは…?

意識が歪んでいる。気が触れている。止めきれていない。
……それでも今は、…そうだ。
強引に戻すよりも……行く末を見守りたいという気持ちが上回っただけなのかも知れない。
けれど、長くはきっと保たない。
これで一年…、次は二年……
遅くとも三年目の夏にはきっと、彼は底へと辿り着く。

それまでに何か、確かな形を―――……得られて、何か変わるのか?

■■拾希……お前は―――

「わたしはただ、■■■■■■に普通に過ごしてほしかった。それだけだよ」



ああ……普通になんて……

…なれるものか