RECORD
Eno.32 不藤識の記録
record. 『ホワイトアウト』
今日も神秘管理局で、神秘率の検査を受ける。
神秘の行使をして、抑制剤を打って、経過を記録する。
神秘の中身に具体性はなく、神秘率の管理ができているかの確認のみ。
毎週行われているルーティーン。
検査の完了が告げられて、退室を促される。
まだ、神秘を無断で行使する許可は下りていない。

廊下を歩きながら、あの日のことを思い浮かべる。
痛みを伴う記憶は、今もなお脳裏に鮮明にこびりついているから。
ここに通う度に、何度も思い返すのだ。
決して忘れることのないように。
――――――――――――
︙
鎖を握る。
手の内に金属特有の冷たさを感じながら、横になる。
己を蝕み続けていた痛みは、この瞬間には既に無くなっていた。
ただし、それとは別の……身体を引き裂かれるような、別種の強い痛みを感じる。
黒いランタンには、神秘を定着させる効果があるという。
鎖はそれを吸収するための通路。光へと誘う道標。
︙
落陽明松が抜ける。
己の中から、黒い影が消えていく。
慣れ親しんだ存在だ。目覚めたときからずっと一緒にいた。
いかないで欲しい気持ちも心の中にはあるけれど、
本当の意味で独り立ちする時が来てしまったのだろう。
︙
視界が白く染まる。
青白い火花が明滅する。
体温が上がっていくのを感じながら、どうにもできず藻掻いている。
周りの声は聞こえなくて、まだ生きていたくて、足掻いて――
――京介が、手を握ってくれた気がした。
――――――――――――
結果、実験は成功した。
落陽明松が自分から離れたことにより、
神秘に自分が食い尽くされることはなくなった。
目にかかる髪が白い。未だに違和感がある。
元々、自分の髪は白かったんだろう。彼がいなくなったから、黒が抜けたのかな。
自分の中から、半分が抜け落ちた感覚。
……寂しかった?あの時の感情は、未だに言葉に表せない。
身体も痛くて、動かないのに。
裏世界では無理して身体を動かしていたから、支えがなくなって辛かったんだっけ。

相棒のことを思い浮かべる。
今どこで何をしているんだろう。また牧場に行ってるのかな。
彼、あそこの牛乳が気に入っているみたいだし。
自分はこれから何をするんだろう。
今日は帰って料理して、明日の弁当の準備をする。
明日も学校があって、将来のことを考え始めるシーズンが近づいてくる。
その前にクリスマスとか、年越しとか、イベントは目白押しだけど。
後はバレンタインの料理教室だ。チョコは無事回収できたし……
やりたいことがいっぱいある。やるべきこともたくさんある。
今までの、閉じた未来とは大違い。
俺はそこを飛び越えて、知らない人生を歩んでいる。
見える景色は真っ白だ。
こけないように、ゆっくり歩こうか。
神秘の行使をして、抑制剤を打って、経過を記録する。
神秘の中身に具体性はなく、神秘率の管理ができているかの確認のみ。
毎週行われているルーティーン。
検査の完了が告げられて、退室を促される。
まだ、神秘を無断で行使する許可は下りていない。
「ありがとうございます。失礼します」
廊下を歩きながら、あの日のことを思い浮かべる。
痛みを伴う記憶は、今もなお脳裏に鮮明にこびりついているから。
ここに通う度に、何度も思い返すのだ。
決して忘れることのないように。
――――――――――――
>>5164950
ふ、……と。
息を少し吐いた後に、そのまま地面へと倒れ込む。
脱力したように。額に発汗、顔は苦悶の表情で。
今表に発露している魂は別物とはいえ、この身体に根付く魂だ。
分離には痛みを伴う。爪を剥がすような、鋭い痛みを全身に。
尚も、無言のまま。
地面に伏しながら、鎖の行く末を見つめている。
鎖を握る。
手の内に金属特有の冷たさを感じながら、横になる。
己を蝕み続けていた痛みは、この瞬間には既に無くなっていた。
ただし、それとは別の……身体を引き裂かれるような、別種の強い痛みを感じる。
黒いランタンには、神秘を定着させる効果があるという。
鎖はそれを吸収するための通路。光へと誘う道標。
>>5165130
黒が鎖を伝って、離れていく。
色が抜けて落ちていく。
抜け落ちた黒は、不定形のまま灯りへと集う。
落陽明松が抜ける。
己の中から、黒い影が消えていく。
慣れ親しんだ存在だ。目覚めたときからずっと一緒にいた。
いかないで欲しい気持ちも心の中にはあるけれど、
本当の意味で独り立ちする時が来てしまったのだろう。
>>5166700
>>5166589
苦悶の表情は耐えず。
青白い火花が、時折散って。
熱い。
白い制服を纏った身体に、陽炎揺らめく。
断ち切られた、ランタンからほのかに溢れる黒。
腕を伸ばすように、手を差し伸べるように。
投げ出された/鎖を握っていた手へと向かって。
手に触れる黒。
陽炎は収まり、ゆっくりと。
身体は時間をかけて冷めていく。
視界が白く染まる。
青白い火花が明滅する。
体温が上がっていくのを感じながら、どうにもできず藻掻いている。
周りの声は聞こえなくて、まだ生きていたくて、足掻いて――
――京介が、手を握ってくれた気がした。
――――――――――――
結果、実験は成功した。
落陽明松が自分から離れたことにより、
神秘に自分が食い尽くされることはなくなった。
目にかかる髪が白い。未だに違和感がある。
元々、自分の髪は白かったんだろう。彼がいなくなったから、黒が抜けたのかな。
自分の中から、半分が抜け落ちた感覚。
……寂しかった?あの時の感情は、未だに言葉に表せない。
身体も痛くて、動かないのに。
裏世界では無理して身体を動かしていたから、支えがなくなって辛かったんだっけ。
「京介、文化祭は楽しかったのかな」
相棒のことを思い浮かべる。
今どこで何をしているんだろう。また牧場に行ってるのかな。
彼、あそこの牛乳が気に入っているみたいだし。
自分はこれから何をするんだろう。
今日は帰って料理して、明日の弁当の準備をする。
明日も学校があって、将来のことを考え始めるシーズンが近づいてくる。
その前にクリスマスとか、年越しとか、イベントは目白押しだけど。
後はバレンタインの料理教室だ。チョコは無事回収できたし……
やりたいことがいっぱいある。やるべきこともたくさんある。
今までの、閉じた未来とは大違い。
俺はそこを飛び越えて、知らない人生を歩んでいる。
見える景色は真っ白だ。
こけないように、ゆっくり歩こうか。
