RECORD

Eno.106 芟花艾の記録

𝘐 𝘞𝘰𝘯𝘥𝘦𝘳 𝘐𝘧 𝘐𝘵 𝘞𝘢𝘴 𝘢 𝘎𝘰𝘰𝘥 𝘉𝘪𝘳𝘵𝘩𝘥𝘢𝘺

思春期を拗らせてたんだと思う。
やっとまともに関りを持とうとし始めた中学時代、俺はまともに萌花の誕生日を祝ってやれなかった。
プレゼントも用意せず、誕生日の席に出て母さんのつくったケーキやご馳走を食べるだけ。
おめでと、だけをそっけなく言う俺に、萌花は『ありがと、兄さん』とはにかんで笑ってた。

……別にあの頃だって、何もしてやる気がなかった、なんて事はないんだけど。
あいつはよく母さんと庭いじりをしていたから、花好きかなと思って学校帰りに花屋を覗いたり。
小遣いでは到底買えないバッグやアクセサリー並ぶファンシーショップを遠巻きに眺めたり。
鉛筆の尻につける動物のキャップとか匂いのする消しゴムとか、そんなかわいい文房具を眺めたり。

小学生女児が喜びそうなものではあったけど萌花が本当にこれを喜ぶのか
萌花の好きなものも趣味も、知ろうせず悩むばかりで。
なによりそんな物をレジに持って行って『プレゼント用に』なんて
当時の俺にはどうしても言えず、結局一度も買った事がなかった。


「高校生の女の子って、何を欲しがるの……」




そして今も同じ事で悩んでいるのだ。
成長しないなぁ、俺。

それでも、今年のプレゼントは、なんとか渡すことが出来た。一応。