RECORD
Eno.361 ジャンヌ土岐マリアムの記録
啓真の力
戦闘が始まる。鈴菜は人質に対し治癒術を発動していく。
それを確認した私や職員の人達が攻撃を行う。
──だが、様子がおかしい。
啓真への攻撃は、一切跳弾したりしない。いやそれどころか……手ごたえがない。
まさか、ダメージを人質に分散させるタイプの術か?
そう思い鈴菜の反応を見たが、首を横に振るばかり。どうやら人質にはダメージが行かないものらしい。
私たちの攻撃を受けた啓真が口を開く。



啓真が一つ、腕を払う仕草を行う。するとたちまち、その腕から膨大な炎があふれ出た。
回避が遅れたが、鈴菜が瞬時に治癒術を発動してくれたおかげでなんとか無事に済む。

啓真は、しかし余裕を崩さない。
自身の放つ攻撃力に余程の自信を持っているのだろう。そして、こちらの攻撃を無力化するなにかしらの力。
さしづめ、人質に配慮しようとして攻撃に出にくくなるところを狙って炎を繰り出すのがコイツの狙いか。
だが、それも私たちには通用しない。

私はそのまま啓真と剣を交える。職員の人達は人質の救助へ。
鈴菜は後方にて、職員の影で啓真以外の人々に治癒術を。
連携をこなし、私は啓真に攻撃を加えていく。
だが、相変わらず啓真への攻撃が通っている感覚がない。何やら防御行動には出ているのだが、それによって攻撃が届かなくさせられている。
なにか、なにか無いか。この状況を打破できるものがないか。
必死に考える私の脳裏に、一つの思案が思い浮かぶ。
そう……あの日、初めて啓真と出会った日。
あの時に得た、悪魔の力のことを。
悪魔の力のことは、鈴菜にすら話していなかった。
「悪魔との契約」は、吸血衝動以上に自分の汚点だと思っていたから。
もし、この力を発揮したら鈴菜にどう思われるだろう。そんな恐怖がよぎる。
だが……私は、それ以上に啓真を殺したくて仕方がなかった。
瑠花を殺し、鈴菜から両親を奪い、今なお不敵な笑みを浮かべる極悪人を。
その気持ちが昂れば……私の魂が、ドクン、と脈打つ。
瞬間、私は理解できた。

そして──私は、叫んだ。

その時が……私が、メタフィジカ「ヴラディスラウス」を初めて使った時だった。
もっとも、この当時はメタフィジカという概念を知らなかったため「悪魔の力を利用した武器」くらいにしか思っていなかったのだが。
「──バカな! なぜだ、なぜ余の力がこのように私的に利用される!!」
私の中に入り込む悪魔が叫ぶのが聞こえる。だが、私はそれを気にも留めず。
鈴菜が驚きの表情になっていることに目もくれず。

そのまま、悪魔の力をまとわせた聖水剣で斬りかかりに行ったのだった。
それを確認した私や職員の人達が攻撃を行う。
──だが、様子がおかしい。
啓真への攻撃は、一切跳弾したりしない。いやそれどころか……手ごたえがない。
まさか、ダメージを人質に分散させるタイプの術か?
そう思い鈴菜の反応を見たが、首を横に振るばかり。どうやら人質にはダメージが行かないものらしい。
私たちの攻撃を受けた啓真が口を開く。

「ほう、思い切った攻撃をしてくるものだね。そこで死んでいる者達のように人質に配慮しながら攻撃したりするものかと思っていたが」

「普通ならそうだろうな。ただ、こちらには貴様の想定をはるかに上回るヒーラーがいるんだ!」

「なるほど……。だが、そちらにばかり気を取られてもいいのかな?」
啓真が一つ、腕を払う仕草を行う。するとたちまち、その腕から膨大な炎があふれ出た。
回避が遅れたが、鈴菜が瞬時に治癒術を発動してくれたおかげでなんとか無事に済む。

「なるほど。君たちが強く出られるのはその少女の治癒術があるからか。中々のものだ」
啓真は、しかし余裕を崩さない。
自身の放つ攻撃力に余程の自信を持っているのだろう。そして、こちらの攻撃を無力化するなにかしらの力。
さしづめ、人質に配慮しようとして攻撃に出にくくなるところを狙って炎を繰り出すのがコイツの狙いか。
だが、それも私たちには通用しない。

「鈴菜の回復力をなめるなよ。人質も全員守り切った上で、お前の攻略法を見つけて誅殺してやろう!」
私はそのまま啓真と剣を交える。職員の人達は人質の救助へ。
鈴菜は後方にて、職員の影で啓真以外の人々に治癒術を。
連携をこなし、私は啓真に攻撃を加えていく。
だが、相変わらず啓真への攻撃が通っている感覚がない。何やら防御行動には出ているのだが、それによって攻撃が届かなくさせられている。
なにか、なにか無いか。この状況を打破できるものがないか。
必死に考える私の脳裏に、一つの思案が思い浮かぶ。
そう……あの日、初めて啓真と出会った日。
あの時に得た、悪魔の力のことを。
悪魔の力のことは、鈴菜にすら話していなかった。
「悪魔との契約」は、吸血衝動以上に自分の汚点だと思っていたから。
もし、この力を発揮したら鈴菜にどう思われるだろう。そんな恐怖がよぎる。
だが……私は、それ以上に啓真を殺したくて仕方がなかった。
瑠花を殺し、鈴菜から両親を奪い、今なお不敵な笑みを浮かべる極悪人を。
その気持ちが昂れば……私の魂が、ドクン、と脈打つ。
瞬間、私は理解できた。

(……そう、か。「こうすれば」、私は……この悪魔の力を、自分のものとして扱える……!)
そして──私は、叫んだ。

「──来い! 悪魔、ヴラディスラウス!!」
その時が……私が、メタフィジカ「ヴラディスラウス」を初めて使った時だった。
もっとも、この当時はメタフィジカという概念を知らなかったため「悪魔の力を利用した武器」くらいにしか思っていなかったのだが。
「──バカな! なぜだ、なぜ余の力がこのように私的に利用される!!」
私の中に入り込む悪魔が叫ぶのが聞こえる。だが、私はそれを気にも留めず。
鈴菜が驚きの表情になっていることに目もくれず。

「行くぞ。緋月啓真。現世との別れをする程の時間も与えずに終わらせてやる」
そのまま、悪魔の力をまとわせた聖水剣で斬りかかりに行ったのだった。