RECORD
やるべきこと
>>7668585
「……貴方が自分の事を嫌いなのも、
私に自分の元を離れて幸せになって欲しいって思ってるのも、
十分理解してるつもり。
……でも、やっぱり、私には貴方が必要なんです。
今の誠さんがいい。隣に居るのは、いつだって貴方がいい」
それほどまでに好きになってしまったから。
自分の目的なんかそっちのけで、夢中になれてしまったから。
得たものを全て捨てて、この世界に留まろうと思えてしまったから。
「……もし、それでも自分が生きていることに罪悪感を感じるなら。
……私のために、生きてくれませんか?」
「私も、貴方のためにこの先も生きることを誓いますから」
だから言う。怯懦に塗れていても、その信念だけは曲げないように。
弱いままでいいと思っていたのに、それでも強くなろうと思ったのは。
全て、あなたが日陰から連れ出してくれたおかげだから。
私は復讐の為に生きてきた。
私の尊厳を踏み躙り、私の家族を奪い、私を捨てた王族を殺す為だけに生きてきた。
その為に沢山の人を斬り、沢山の罪を犯し、私の人生一つでは償いきれないほどの業を重ねた。
これほど罪深い人間が、あまつさえ幸せを望もうなどと。
……きっと、笑い話にもなりはしないのだろう。
「テンドウさんが、過去を想う時、…」
「…私をイメージしてくれたのならば。…私は、そこに居ます」
「…だから、泣かないで。幸せになると、約束して下さい」
目を瞑れば鮮明に思い出す事のできる、センセイとの別れ。
あの人は私に、幸せになることを約束させた。
私の積み重ねた業を知っても、目の前で人を斬るのを目にしていたとしても。
それでも、私の幸せを願ってくれた。
恋人のために生きるなどと、昔の私には口にも出来なかっただろう。
けれど、間違いなくそれは本心で。
いつからか彼との幸せを、心から願っていた。
……今でも、本当にいいのだろうかと思うことはある。
本当に私なんかで、彼は満足なのだろうか、と。
好意を疑っているわけじゃない。ただ……私は復讐者だから。
もう一度、彼の元を離れなくては行けない時が必ず来る。私の悲願を成すために。
……また、彼を一人にしてしまう時が、いつかは来る。
>>1293628
あなたと自分は、何かと価値観が似てきた。
ここで、明白な違いがあることを知った。
自分は命を奪うことが楽しい一方で、その狂暴性に恐怖を感じている。
あなたは命を奪うことを楽しまない一方で、慣れてしまっている。
0と1の差は大きい。
月影誠は寸前で人殺しにはならなかった。
だからこそ、殺すという行為に快楽を覚え……同時に、強い抵抗もある。
あなたのようになれれば。
慣れてしまえたならば。
きっと……もっと、楽に生きられたのだろうな、と思う。
「……もしもいつか」
「復讐のために、お前は元の世界に戻るのかな」
復讐を否定しない。人を殺してきたことも。
それらに対する恐怖は一切ない。
元の世界にいつか戻り、それを果たすことも。
離別を惜しむくらいで。それを望むならば後押しできる。
あなたを案じるならば、その後のお話。
それだけのために生きてきたあなたは。
復讐を果たしてしまったその先は、何を理由に生きるのだろう。
「……そしたらさ」
「いつかまた、ここに戻ってきておいでよ。
そのときは絶対に歓迎するよ」
「大丈夫」
「どこに居ても、どんなところで迷っても」
「―― 俺は必ず、アヤメを見つけ出すよ」
送り犬は、迷い人を導き正しき場所へと返す怪異で。
ちょっと特別な俺達は。世界の境界線を越えても見つけ出すよ。
そう約束して。あなたから離れた。
きっと、彼は快く送り出してくれる。
復讐を果たせと、生きてきた目的を達成しろと。
自分のことなんか気にしなくていいからと、背中を押してくれるだろう。
私もそれを望んでいる。……いるはずで。
>>6519730
「――――、」
突き放すべきだ。自分には関わらせないべきだ。
こんな自分と一緒に居ない方がいい。
別の居場所があるのだから、そこで過ごした方が彼女のためだ。
それを、心から肯定できるのであれば。
そもそもとっくに両親の言葉も兄の言葉も断ち切れている。
「…………ち、が、」
「や、」「違っちゃ、」「だめで、」
分からない。最善が。
この拒絶感も、あってはならないもので。
邪魔だと、捨て去った方がいいもので。
「……いなく、ならないで」
「…………」
「ごめん。今日は、もう……帰って」
あなたに背を向けている。
酷く声は震えていた。
……あの、痛々しい姿は今でも思い出せる。
私が居なくなったら、彼はまたああなるのだろうか。
それは……嫌だ。嫌、だけど。それでも……。
………………それでも、私は、復讐者だから。
幸せになる前に、やるべきことが、あるから。
だから──────。


