RECORD

Eno.609 結祈 夜呼の記録

雪祭り後日


雪祭りでかまくらを作っていたはずだった。
縁華と一緒にかまくらを作って、それで

何故私はベッドの上に居るのだろう?

傍らにある開きっぱなしのSURFの光に目が行く。

「なに、これ……」

そこには覚えのない文章が私の名で送信されていた。


縁華へ

先日は世話になった。
いろいろと調べてみるにSURFならば話が漏れぬという事を知り、あの場では言えなかった話をここで失礼する。
とはいえ、説明しても詮無い事。故に私が何者であったのか、夜呼の身体に何が起きているのかをかいつまんで説明させてもらう事にする。

結祈の家は鎌鼬の怪異を祖先にもつ人交じりの家系だ。
私という存在はその『祖』である。
現在の結祈の家は怪異の血を蘇らせその力を利用して繫栄しようと目論む愚か者ばかりになり果てた。
己らの血に鎌鼬の意識を蘇らせればその秘薬の恩恵を受けれると思い込み子らの中で適応者を造り出し生贄にせんと呪いをかけ今に至る。
私はその呪いを以て夜呼の身体を借り現代に蘇った初代の意識である。

私自身は蘇るつもりも無く、夜呼を守る何某かの力により眠っておったのだが、その守護するものの力を本人が弱めてしまった為夜呼が眠ったり意識が遠のいた時に強制的に覚醒するようになってしまった。
子孫を乗っ取るつもりはないのでそこは安心して欲しい。
だが、目覚めたからにはやるべき事が有る。
その間は夜呼の身体を借りる事になるがこれは結祈の家の始末をつける、それだけの話であるからどうか夜間、私に出会っても見逃してほしい。
心配をかけてしまって申し訳ないがこれ以上子孫を放置するよりは夜呼の為と私本人は思っている。


そして縁華、貴方に私は礼を言いたい。
末の子孫である夜呼は私の器として育てられた為意志薄弱に育てられていた。
私が目覚める事でその意思が簡単に吹き飛んでしまうように、そう育てられていた。
貴方が夜呼に与えた言葉がこの子に希望を探させるきっかけとなった。
いまやしっかりと私の存在に抵抗する魂を感じる事が出来るようになった。
思えば、貴方は結祈や伏戸の都合で出会いを仕組まれなかった夜呼の初めての友人であった。
子孫はみな、私の子のようなものだ。愚かであれ皆愛おしい。
あらためて、心から貴方のような友人が夜呼にできた事を感謝する。
ありがとう。



「なによこれ……知らない、こんなの送ってない!」


夜呼へ。

お前もこれを見るのだろう。
現状を把握したのであれば大人しくしている事だ。
暫くの間、伏戸の地下道へ行ってはならぬ。
眠りの間やむなくこの身体を借りるがこれ以上無茶なことはせず血の回復に努めるべし。
表世界でよく遊びよく学び健やかに過ごすべし。

                    以上。



怖い、と。
手に持ったスマートフォンを投げそうになり、SURFの入力中の文字を見てその手が止まる。

縁華はかかれている事を素直に受け入れているようだった。
そうして「私」へと彼女のメッセージは続いてゆく。

私は受け入れなければならない。
思った以上にやり方を間違えていた事も、この現実も。

逃れられない。