RECORD

Eno.43 神林 雨の記録

同期

化け猫、猫又、ケット・シー、招き猫──

あらゆる猫の資料を漁るも、どれも私が見つけた猫とは一致していない。
猫の特徴を集め、それらをあらゆる事象に当て嵌めては比較していく。

夕立の雨上がりのような香り。
眠り誘う性質。
日が沈んだ頃の色合い。
星が散らばったような尾。

暗がりにだけ溶け込む性質。
不可視の生き物。

総じて。
夜に関わる事象。例えるなら、それが近いという結論を得た。

猫は、夜行性という共通認識がある。
故にその形をとっているのか、わかりゃしないが納得はする。

これが正解だとするならば、この猫はかなり高位の神秘性を纏っていることになる。
夜とは多くの生物が認識し、解明され、白日の下にさらされている。
夜とは恒星が放つ光が当たらない惑星上での時間帯でしかない。
それが手足を持ち歩き回るなど大問題のはずだ。


それを無視できるほどの信仰を集めたもの。居るだけで危険な神秘の可能性もある。


しかし、何故ここまで友好的なのかは全く理解できない。
思い当たるものがあるとするなら、ひとつあるけれど。

「ンナ ン」


目の前で資料を見つめる私に向けて、何か求めるようにひと鳴きする猫。
……そう、使い魔であれば成立する。
何かを目的に人工的に組まれた神秘であれば、人への従属性を示させることができるのではないか。
勿論、そんなことができた話なんて聞いたことが無い。これはもはや神性に近い気すら。

いや、知らない、わからない、だからこそ神秘なのだろうけれど。

「ンン… ゴロ」


雨の香り纏う猫を撫でまわす。
これを、使役する。確かめ、協力を頼む価値はあった。
自分の身を使うのであれば、誰も文句は言うまいよ。


───

陰陽師の話とか、あったっけな。
うちはその家系ではなくて知識として蓄えているだけだけど。
それをまさか、自分で試す時が来るなんて。

同期。
見えぬ糸でつなぐみたいに。
知覚、五感、あらゆる情報。

それらを共有し、猫に教える。その代わり。
猫が与えたがるものを、享受することにした。