本当に事故だったため、魔法少女として闘うことを強要されるでもなく、ひたすらに謝罪だけを貰った記憶がある。
あの時実際に何があったのかはあまり覚えておらず、思い出そうとしても靄がかかったように思い出せない。
でも、恐らくその時から魔法が ”使おうと思えば使える(使う素質がある?)” 体質になった?と思っている。
自分では魔法の出し方も変身の仕方もまっったくわからない。教えてもらってないからね!
※ しかし最近は、この街で神秘と共に暮らしていくことでなんとなく魔法?の使い方がわかるようになってきたかもしれない。
隠してある真実について

『可哀想なキミに、一つ真実を教えてあげよう。有宮鴎という人物は、既に死んでいる』
「違う……違うっ!私は……」
昔、魔法少女と邂逅したあの日のことをカモメは殆ど覚えていない。しかし、たった一つ、覚えていることがある。
それは、『有宮鴎は、自分の目の前に転がった有宮鴎の死体を、確かにこの目で見た』ということである。
記憶『有宮鴎の散々な一日』
あの日、有宮鴎──、つまりキミは珍しく寝坊をしてしまった。どうやら目覚ましのアラームが壊れていたらしいね。
急いでいたキミは、いつもなら使わない近道を通って学校に向かったね。だって遅れたら大目玉だ。
いつもは遅刻しないあの真面目ちゃんが、どうして遅れちゃったの?……そんな風に怒られることは目に見えてるじゃないか。
だけど、可哀想に、結局それが一番の失敗だったんだ。
通った道の先に、怪異がいた。魔法少女もいた。恐らく何らかの理由でその近道がアザーサイドと繋がっちゃってたんだろうね。
だって、キミの住んでいる街は北摩のお隣さんだ。アザーサイドへの入口がはみ出してきちゃうことも、もちろんある。
それで……キミは、魔法少女ちゃんが撃った魔法にやられたんだ。
魔法少女ちゃんはもう大慌てさ。なんたって人を殺しちゃったんだからね。
キミをなんとか生き返らせようとしたよ。だけど、無理だった。いや、元から無理なことだったと言った方が正しいね。
なにしろ蘇生魔術なんていうのは、とうてい並の魔法少女に扱えるようなシロモノではないんだ。
そこで彼女は次善の策に打って出た。すなわち、キミのクローンを作り上げる。
土塊を活きた細胞に変え、キミの全身を形作り、そこに『死んだ有宮鴎』の記憶と経験をそのまま移植する。
そうやって出来た存在、それが今のキミさ。
キミが記憶を得たとき、目の前に有宮鴎の死体があったはずだ。ホラ、見比べてみなよ。
どこからどう見てもキミは有宮鴎だろう?
でも、キミはしばらくして悩むことになった。
なんと、死んだ有宮鴎の記憶と経験を移植して出来た新しいキミの人格が、元の人格とズレ始めたんだ。
どうやら元々の有宮鴎は、かなり真面目できちんとした優等生だったらしいね。周りからもそう記憶されているし、自分の中にもその記憶はある。
でも、新しいキミはどうやら朝起きるのも苦手だし、宿題だって真面目にこなせないじゃないか。……反論できるかい?
カンペキな経験と記憶の蓄積があり、全く同じように再構成された身体を持っている……なのに、どうしてそんなことになるんだ?
「元の有宮鴎だけが真の『有宮鴎』で、私はまったく違う存在なんじゃないか?」……そんな疑念をキミが持ち始めるのも当然なことだ。
キミ自身、もはやどこまでの人格が『元の有宮鴎』の持ち物で、どこからが『新しいキミ自身の持ち物』かなんて分かっちゃいないんだろう?
……そして、キミは『嘘』『偽物』を恐れるようになった。実存に疑問を持つようになった。
だからキミは、北摩に来たんだろう?
……
ふふ、しかし私はそれでいいと思うよ。ツギハギのパッチワーク、それがキミだ。それをキミと呼ぶんだ。
どうせ他の人間たちも、色んな人の影響を受けて出来上がったパッチワークみたいなもんだ。そこから何を作り出すのかはキミの自由だ。
鳥たちは個々同士の 『一定の間隔を空ける』 『障害物を避ける』 といった単純なルールしか持たないが、群れを作る。
我々はただの 3.7*10^13 個の細胞に過ぎないが、動いて意識を持ち、生きているように見える。
しかしそこに意味を見いだすにはランダムではない大いなる意思が必要だ。
鳥の群れは別の種が混ざればちりぢりになる。細胞なんて動く肉でしかない。
じゃあ、それらはなぜ成立している?
パッチワークには、青写真がある。
群れを作る様になった進化には、淘汰という自然の意思がある。
肉の塊は、しかして意思を持つ。
キミが意思を持って取捨選択する、そこにキミがいるから。


ENO.2434