RECORD

Eno.896 百堂 巡の記録

d09.悪戯n回目

「センドウやい、あの鬼っ子またなんかやってんぞ」
「なにぃ〜? 知ってますけど改めて言われると捨て置けませんねそんな面白そうなコト」
「オイ」
「冗談」

怖い顔しないでくださいよお、と片手に持っていたノートで大袈裟に顔を隠した塾長へ化け狸の講師はその丸い目をじとりと細めて見せる。
どんな廊下からーー例えば地下三階から入ろうがこのこぢんまりとした塾長室には窓があって、今も文机をよどんだ橙や紫の陽光が何処かおどろおどろしくぼんやりと照らしていた。

「まあでも大した悪戯じゃあないでしょう。あの子だってウチの卒業生ですよ、その辺の加減がつかないはずないじゃありませんか」
「そりゃあそうだがよ」
「ほら」

笑って済ませられる範疇ならよし、という姿勢で塾長のスタンスは一貫している。今頃どこかの部屋でうきうきと仕掛けを施している天邪鬼じみた怪奇の少女が塾生であった頃からずっとだ。
もちろん、笑えない冗談は庭先の池行き。
それでなくたって「行くな」に逆張りして迷子になっては犬の鳴き真似で池ワープを繰り返してきたのが彼女であるのだが。

「良いのかァ? 人間の学校であんなんやってみろ、先公に怒られるぞ」
「怒られたら学べる子ですからねえ、そこまでフォローしすぎる必要は無いでしょう。思春期の子供なんて人間でも盗んだバイクで走り出すのがセオリーですし」
「いつの時代の価値観してんだよ」
「何を仰る、令和を生きる現代っ子ですよ僕は」

バイクまでは冗談として。
まったく心配性な狸さんですねえ、とこれみよがしに溜息を吐きながら塾長は文机の前から腰を上げる。自分だって散々人を化かして遊んできただろうに。

「それじゃまあ見るだけ見てきますけど、平気そうならそのまま遊んできますからね僕も」
「お前な……あっクソ、もういねェ」

とん、と足音ひとつ残して廊下に出た羽織姿はもう影も形も無い。自分の縄張りの道なんていくらでも引き延ばせるしいくらでも縮められるのだろう。
今頃は何処かで、と思っている内に、

ジャララ、とそれはもう派手な鈴の音が遠くで響いた。
[大和通り][私塾「百堂塾(裏)」]
百堂 [Eno.896] 2025-05-27 21:21:41 No.682778

>>682638
なーにをしてらっしゃるんですかあ……?

背後からどうもこんにちは。こんばんはかも。
ニッコリスマイルと一緒に湧いて出てくると、そっと肩に手を置こうとする。

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[大和通り][私塾「百堂塾(裏)」]
[Eno.1130] 2025-05-27 21:25:30 No.682959

>>682778
「んげっ!」

そんなヒョウキンな声を漏らして、足(尻を?)滑らせて落っこちる。
その拍子に、己の作ったワイヤートラップに引っかかって「ジャララララ!!」と鈴の音が響き渡る

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「……戻るかァ」

さてこの廊下にはどうやって来たんだったか。
職員室までの道のりを頭の中でこねくり回しながら、講師は襖をぱたりと閉めた。