RECORD

Eno.96 加瀬秋日佐の記録

7月第1週


灯りを点けない部屋の中にあっても視界はぼんやりと金色に明るい。
頭の痛みは鎮痛剤では抑えきれずに鈍く脈打つが、耐えられぬものではない。
煙草の煙は喉を燻して焦がそうとする。肺はどのくらい煤けたろう。

窓の外を眺める。人の気配はなく、あるのは己のみ。

蓋する中で巻き込んだものをぼんやりと知った。
好奇心を細かく切り分けることなぞ出来るはずがなかったから、全てに覆いを掛けた。

[フラワーガーデン][虚華の花壇広場]
シキ [Eno.211] 2025-06-26 04:44:31 No.2545127

>>2543490
「いらな~い」

滑らかな語りを余すとこなく聞きはしても返事はこれ。
あなたは身近にいる高校以降の人生モデルのひとりだけど、その後追いかけられる程の熱量を人生の何処にも持てないんだ。

「仏教の大仏みたいなのって」
「こっちの世界にいそうじゃない?」

動く無機物も創造上の妖怪もいる裏世界じゃ、夢物語と一蹴するに惜しい話。本物に値するのかはさておいて。
引き返すような帰り道をぐるっと回ってどれくらい経ったろうか。
普遍的な硝子モドキの花共。話の種だけスクスクと。
揺れる花の煩わしさに、こちらはついぞそっぽも向いてしまった。

「会えたら良いですね」「もう会いましたか」

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確かに裏に足を踏み入れた時、そんなものがいるかもしれないと思ったことがあった。
胸が躍ったことを覚えている。己は知らぬことを知るのが好きで、裏の世界は未知が溢れていた。
今は美しい幕が下りて、静か。


受け入れられる恐ろしさを知った。
抵抗をしてほしい、逃げてほしい、己を厭ってほしい。そんな心がよくよく分かる。

[プレジャーシティ][竜田揚げの或る屋台]
夜住 [Eno.1883] 2025-06-25 00:36:37 No.2498126

>>2497809
こんなところにまで共通点が!?
合縁奇縁にも程があるかも。
まぁ、やらかした結果失うだとか、
そういうのは良くある話なのかもしれないけど。

「なんでだろうね」
「……俺は、物事を確定させたから……」
「だと思ってるけど」

「本能で逃げようとしたら……」
「……や~、どうだろ。これは自惚れだけどさ」
「逃げようとする、イコール、殺害になるんじゃないかって」
「思わんくもない」

殺意がなくとも包丁を向けられたら、そしてそれが死に値するなら。
死に物狂いで抵抗するのが本能ってものじゃないか、とか。
そしてそれを、相手が否としたのなら。
タネは、割れてるんだ。本当はね。

「そんでも竜田揚げは美味いんだよな~!」
「業が深いよ、人間」

まだ全然美味しいんだよな。
二つ目頼んじゃおうかな……。
何やらかしたってさ、元気でいられちゃうんだ。
飯は美味いし眠るのだってするし、こうして他人とも話す。
あっちはそうは出来なくなったってのにね。

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抵抗してほしいよな。是としてほしいよな。
誰が殺したいなんて、思うものか。

それなのに?それなのに!


喪う悼みは……もう十分に知った。
これ以上は要らない。欲しくない。

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[Eno.321] 2025-05-29 14:16:51 No.800142

「じゃあ、三本にしましょうよ」

微糖の隣に堂々とカフェオレの缶を並べる。
この場に相応しくもない華美な詰襟の学生、ここに見参。

「忙しそうですね、秋日佐さん」

パソコンカタカタ真っ最中の隣に腰掛けて、
院生は院生で大変そうですなあと遠い目をした。

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不意にあなたが現れて、他愛もない話をしていくのが楽しかった。
あなたと酒を飲み交わしたかった。そんな口約束もした筈なのに。



全て知っているならば、本当は何かを諦めるべきだった。
そうだな、分かっている。けれど。

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落葉 [Eno.1020] 2025-06-29 21:00:31 No.2700235

>>2693682
玄関の扉の前、背中越しに君の言葉を受け取った。

「……ふふ。ええように思っとって?」

少しだけ肩を揺らして。

「お粗末様でした。
 青年が無事でおってくれるなら、なんぼでも来たるよ」
「またね」

唐傘の先を静かに地面に落とす。
肩で押し上げるように引っかければ、ゆるりとした足取りで夕闇の中を去っていっただろう。

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またね、なんて幾らでも聞きたいだろう?
己こそが一番の恐ろしいもの・・・・・・であると、知っていても。




零れ落ちるまでは、足掻こうと思った。
強欲というのか、諦めが悪いと言うのか。
境界線を歩んでいる。足は未だそこにあって、転げかけながらも己は立っている。

終わりに至るまでは、藻掻きたいと思った。
無様でも、悲惨でも、嘲笑を受けても。

いつか、全て壊し尽くすとしても。

ただ、夕焼けが穏やかに射している。