RECORD

Eno.107 芟花萌花の記録

⋆*ꕤ︎︎ 息継ぎ

14歳のある日。
お母さんが亡くなって、
父方の叔母さんの家に住むことになった。

お父さんのことは本当によく覚えていない。
でも、写真の中のお父さんによく似た、
やさしい顔つきの女の人だった。


それが、青白くやつれるまで、1年と保たなかった。


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かるかもか [Eno.107] 2025-06-04 01:10:08 No.1179234

>>1174042

「……ごめんね。わたしもね、
 兄さんに内緒にしてたこと、他にも、ある」

「お母さんが死んじゃって、叔母さんの家に預けられて、
 ……わたしのこの体質のせいで、
 叔母さんが、どんどん、やつれていったこと」

兄さんの言う通り、両親が既に神秘と関わりがあったなら
両親がそうならなかったのだって、今なら納得ができる。

その両親がいなくなって、
そうして初めて、萌花は本当の"普通"を知った。

「覚えてるかな。
 高校に進学するのに、ひとりぐらししたいって、
 兄さんに相談をしたの、わたしからだったんだよ」

厳密には、きっと、「してみたい」って言い方をしたけど。
本心なんて、叔母の元を早く離れて解放してあげないとって
そんな、一心だったのだ。

でもそんなこと、言えなかった。
幼い頃からこの体質を知ってる兄さんも、
これは"普通"だって、思っていると思ってたから。


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それから更に1年と少しを共に過ごした。
その間も、一度も責めるような言葉を受けたことはない。



「うん」


「わかってる」




そうせずにいてくれた理由が、
やさしさからくることだということくらい。

そしてそれに報いるためには、
得たマイナスをせめてゼロに戻さないと。



「……えへへ」




立っているのは、薄氷の上。
いつ壊れてしまってもおかしくないと思っている。
喪失というものはそれくらい身近にあるということを、
よく知っている。

そのなかでも、いちばんおおきな、
母との別離を皮切りに喪失したものがあって。


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かるかもか [Eno.107] 2025-06-04 01:08:48 No.1179153

>>1174042

でも。

「……確かにね。わたし―――
 この体質のこと、あんまり、好きじゃないよ」

それがもう"普通"じゃないことを知っている。
他人からは、"普通"だと思われないことを知っている。

おばけは、こわいものらしい。
陶椛ちゃんだって、そういう話は苦手なんだと
クラスで言っていたのを覚えている。

萌花は、平気だ。
でも、自分が平気だからって、
何も思わずいられる時はもう過ぎ去ってしまった。

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それをずっと、
自分に求めている。

何にも秀でていなくたっていいから、
ただ、"普通"の人でいることを。

得てしまったマイナスを、ゼロに戻すために。







―――それなのに。




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セイシロー [Eno.448] 2025-07-12 23:59:59 No.3650529

>>3649893
「………………」

考える。どうだったか。

「信じる理由はありませんでしたが」
「疑う理由もそんなになくて」

「なんとなく」
「そうなんだなあ、って」
「思ってた気がします」

というより。サンタがなにか。いまいち分かってなかった、ような気もするけど。

「なんか」
「赤い服の人が……家にいるなあ、って」

今考えると、変な話ですね。と。
小さく。小さく笑った。

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かるかもか [Eno.107] 2025-07-13 00:26:27 No.3652258

>>3650529
その言葉に、様子に、つい。

「あはは」

萌花も、あわく、小さく笑う。

「なんか」
「清士郎さんっぽい、です」

これまでに嵌った新しい前提と。
今語られ浮かべられた幼少の姿が、
それはそれで、また、かちりと嵌る。

やっぱりそれが、なんとなく、
本当になんとなくなのだけれど、少し嬉しい。

いや。

「……安心しました」

嬉しい、より適切な言葉を見つけた気がする。
この落ち着いた心地に、名前をつけるなら。…多分。

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拘らなくてもいいのかもしれないって

少しでも思えてしまう時間がある。





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かるかもか [Eno.107] 2025-08-08 00:09:05 No.5195159

>>5195083 >>5192530
「それは……」
「よかった、です」

止まった足が動き出す。
楽しかった記憶が、祭りのあとの静けさが、
もう少しだけといっていた。

だけど、あの時間だって大切なお祭りの思い出で、
そこに優劣なんてない。
だから、足先が向かう場所って、もう決まってしまった。

川のせせらぎが聞こえてくる。
水辺はやっぱり、いくらか涼しくて。
……どこか、落ち着く心地がした。
そこだけは、祭りのあの日とおんなじだった。

「ここも、静かですね」

そのことが少し、うれしかった。
座れそうな場所を探して、ゆっくりと、腰を下ろす。

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その、落ち着いた心地に、

名前を つけるのなら。