Ino.19 馬車馬島 - シマナガサレ
ハードコアスモールパスワード付
悠遠たる途中下車

Ino.19 馬車馬島

君たちは深夜のトラムに乗ったはずだった。

STATS

5人 / 人数

ハードコア / 難易度

スモール / 広さ

OVERVIEW

その日は珍しく、終電後にも動くトラムがあったらしい。
偶々予定時刻から遅延していたのか別の運行予定があったのか理由は定かではないものの、
何よりも助かったといった辺りだろう。
仕事か何か、或いは乗車券も持たずに紛れ込んだ不届きものか。
確かであるのは、あなたたちはそのトラムに乗り込んだという事だ。


それが怪異たる幽霊トラムとも知らずに。

チャットとメッセージ

ゲーム中はチャットはALLと同じ表示がされ、またメッセージは公開されません。
エピローグ期間に入り次第チャットは通常公開され、メッセージはゲーム終了後に通常公開されます。


「ん」

頷いて。

「んじゃま、帰るまで改めてよろしくな」

まだ、船旅もあるのだし。
離れていくあなたににこやかに笑いかけ、その背を見送った。

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何もかも度が過ぎれば結局は災いでしかない。
中立と中庸を望む事は同じであるが、結局は幾分かの偏りが必要だった。

「だろ」

上手く生きてるんだろ、今は。

「んじゃあ頑張れよ」

そう言ってこの場を離れようとするんだろ。

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M.B.は社会的に生物であるが故に、毒性があると理解しても信用を行う。信頼をする。
岩貝と同じだ。アタろうが食わねばならないときはある。卑屈や過度な怯えによる自閉が己を救うとは考えない。

「そうダナ」

前者にも後者にも同意。
商売人としては自分よりも遥かに良くやっているのだろうと思う。

「そうする」

今の所落ちる気はない。
そこに至るために手放すものの価値をよく知っているから。

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よくも悪くも人間であった。

「ん」

大して書き置かれてないメモ帳だし、1枚2枚書いて持っていくには十分だろう。
信用に信頼なんて危険なだけであることが往々にして存在するが、
孤独というのはあまりに分が悪い。社会にも、己の精神に対しても。

「やや悪い意味で気が回るよな。アイツも。
少なくとも今のお前よかまだ安心できる地盤があるとは思うけどな」

それと私よりも。

「精々身の振り方考えな」

んで、出来れば下層になんか落ちなけりゃ良い。

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同じ釜の飯食ったなんとやら。
いつでもどこでも、人間の気性は大して変わりやしないな。


「ん」

メモメモ。
書き置きに使った筆記用具で軽くメモを取っている。

「分かった」

後ろ盾がない人間にとっての信用なんてものは命の預け先を決めるに近しい所業であるが、M.B.はそれを理解しながらも他人を信用できる生き物だった。
石橋を叩くのは渡るためであって、壊すためじゃあない。

鉱石屋? 首を傾げて…思い至った。消去法。

「それも手ではあるが」
「少しばかり優し過ぎるようにわたしには見える」
「養うならまだしも養われ続けるには不安があるんだよな」

失礼かもしれない。

「でも食うに困ったら頼るかも」

打算!

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「よしみィ~?」

まあ図々しい位が丁度いいから気にしなかったけれど。
その要望にはやや困った様な声。だって大概の縁は自ら切っているし。

「……まだ残ってるか知らないけど、中層の傭兵区にワタシが昔所属してた組織がある。
鉄火場から完全に離れてるとも限らないが、そこまで酷い仕事は舞込まない筈。
それ以外なら幾つかの情報は提供できるが――内情はどうだか」
「それこそ今ならあの鉱石屋の小間使いにでもなるのが一番マシかもな」

どうやらアレも中層に根を張ってるみたいだし。

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善性とするには露悪的で、諦念が付きまとっている。
退廃的とも言える考え方は将来に無駄な希望を寄越しはしなかった。
フードの奥で瞳に似た色の髪が揺れた気がした。

「……」

極論はただの他人だと言うのに、一時的とはいえ寝食も運命も共にしてしまうとね。

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そして、この生き物は打算的で強かに他者の利用と他者からの利用を享受する。

「じゃ、先輩」
「漂流のよしみだ、教えて」

「いい感じの職場のコネ持ってないか」

あと、それなりに図々しかった。

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薄らと燐光を放つライムグリーンが、フードの下をじっと見ている。
その奥の人相を捉えられずとも、発語の意義を毀損するような露悪的解答を覗き込んでいる。

「そうか」

先達のアドバイスを無碍にはすまい。
盲目的ではなく納得がある故に、だ。

「………………」

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とってつけた情のようなものなんか振り翳しても気持ち悪いだけだし。

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しかしそれを合理的だと判断し、愚かだと自認できるのもまた賢さが無ければできぬ所業なのだ。
真なる愚者は己が愚者である事すら知らぬ。


「……」

額を掻いた。

「さあ」
「言葉を投げる事に逐一意味なんか考えても面倒なだけ」
「強いて理由言い訳を添えてやるなら、先達の先輩風とでも思えばいい」

本質的には身勝手だ、何もかも。
よくある事だ。身を以て知っている。だからこそなんて言える説得力を有しておらず、
だからこそ独善に帰結した。

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あなたが凡夫でないことを肌感覚で知っている。
同時に、凡夫で在ることの、在れることの価値も知っているのだと思っている。

そして、あなたが利口と称する娘は、愚かさを唄える小鳥だった。
それが合理的であるならば、愚かであることを是と出来た。


「……………」

「ハイドは」
「どうしてわたしにそれを説く?」

大丈夫だ、と言えばいいのだ。
数多凡愚が装填を他者に任せた不運と悪意のロシアンルーレットを日々繰り返していることに気づいていたとして。この先この娘がその日々に帰還するとして、込められた弾丸がちらとそのフードの下の目に映り込んだとして。
よくあることだ。…その構造そのものを変えたいとするわけでもあるまいに?

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だが、その幸福は。

そうだった・・・・・よ」

脆いのだ。

「生かされるってのも一つの能だし、生きるってのも能の一つだ。
やり口にほんの少しの無謀と無知が入るだけで人はどこでまでも落ちぶれる」

網の目の様に張り巡らされた蜘蛛の巣がある。
遠目から見ればその区別は付け難く、寄って視認する頃には既に蜘蛛の毒牙が首を這っている。
故に安全地帯など、最終ラインなどと言うのは見目以上に存在しないのだ。
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畜群向けの言葉では無いのはそう。
だってこれは既に畜群から逸脱してしまっている。視座が違うし立場が違う。
超人であろうとまではしなかったが、凡夫として生きるには逸脱しているのも事実。

「一定層そういう人間が必要なのはそうだろ、間違っては無い。
生まれが上層のボンボンなり中層の家庭に宛がわれたら特に、だ」
「お前がいくら利口だからって、利口なだけじゃ敵わねえ時もあるし
理不尽も意味の分かんねえ事案もその辺に転がってる」

凡夫として生きる限り、生かされている限り。
脆くも土色の牧場はそこにある。

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「ハイドは」

主語をすり替えた。

そうだった・・・・・?」

都市には確かに社会がありインフラがある故に、多くの人間は自分の食い扶持を自分だけで維持することはできず社会に、他者に依存して生きている。
しかし、それは保証されたセーフティネットではないだろう。
広い網の目、いくつもが時折運悪く、時折悪意によって、零れ落ちていく。
その構造自体を、幼心を残す齢であろうがM.B.も理解していないわけではなかった。

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M.B.当人にもその知識は殆どない。
己の名が異世界の鳥の名を冠していることさえ知らない。
知らずとも縛られているだけだ。法則に。


「…………」

あなたが論じる言葉は理解出来る。
理解出来るが、手の届かない能の話をされているとも思う。
それは畜群を逸脱し超人に手をかけんとする者の言葉だ。

「ひとは」
「……わたしは」
「社会に依存していると、思う」
「都市に生かされていると思う」
「わたしの生存能力の半分以上は、わたし個人の能に依っていない」

効率化。合理化。
意図的に切除された脅威。
M.B.は都市社会を支える名もなき細胞であることを望まれ、無意識のうちに己でもそう望んでいた。

つい先日までは。

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「知らねえよ」

だから当然と無知を翳す。
確かに君よりかは大人で視野は広く、下層奈落の味を先に知っているけれど。
それは全員に適応のされる話ではないからだ。
きみの名義も養父母への影響も、知りやしない。

「前提として、守られるという事は何かに隷属するって事だ。
それが中庸である証拠になると思うか?
停滞する事は現状を維持することじゃねえ。自らジリ貧に持ち込んでるのと同じだ。

守られるだけで生きていけるほど、あの都市が甘くねえのだって分かってんだろ」

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実際。
この男が吐いた言葉の殆どはその思考や会話の反芻だ。
現状と考えつく未来を当然の様に列挙し、指差し確認する事と変わらない。
普遍な男からすればまじないの知識には乏しく、そも略式から紐解く名に思い当たる事も無く。
故に真似事めいた鳴き方して生きる由来へ行きつく事はないのだろう。

「…………」

大丈夫、などと宣う儚さを知っている。それは虚偽の言葉である。


「ああ」

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「わたしが怠惰で、思考停止したまま生きることは」
「わたしを何処まで守ってくれると思う?」

呪い名称定義は確かに機能している。
養父母はM.B.を害さなかった。

だがしかし、わたしは今、此処に流れ着いて。
下層奈落へのきざはしの前に立っている。

「わたしはこのまま、中庸で生きていけるかな」

あなたは己よりは聊か大人の役を羽織っているように見えたから、子供で在ることを振り翳してみることにした。

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マネシツグミ害無き無力者を殺すことは罪である。
この者がMockingBirdマネシツグミである限りは、この者を害することを罪とせよ。


そういう形状の、呪いおまじない


「ハイド、」

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言い表し方が難しい。
大言に言いながらもその実、惑ってはいる。

M.B.が小市民であることに拘るのは一つの自衛本能だった。
名に刻まれたおまじない・・・・・に対する消極的な拘りだった。
宗教観に近い。何処ぞの世界の神頼みのような──生活が安定しているときには拠り所にしていたものの、いざ生活不安が直近に差し迫るとそれがあるから大丈夫と胸を張って言えるでもない漠然とした感覚。


「……………」

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「……」
「何か不満不安?」

無いことが無いとも分かりはするけれど。

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中層は一般市民が暮らす階層だ。場所によってはアパートも存在するし、
まともに換金が出来たのなら暫くは。これだけあれば暫くはどうにかなる。
一攫千金とは文字通り。

「お前は利口だし、出来る範疇の仕事さえありゃ
仕事を貰えなくもないかもな。確実に、とは言えねえけど」
「それでも今まで鉄火場に居なかったんなら、
下手な組織へ行くより余程とその辺の店を探す方がマシ」

恐らくは、でありきみが子供ではないなら、とは言わなかったが。
大体の事は理解してるだろうし。

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微妙に言葉尻が重い。
金は力になるが、力として運用できる程のコネも経験もない。後ろ盾もなくなった。
先立つものだけは手に入れたが、下手をすれば鴨葱になりかねない自覚はあるとも。

この金を元手に商売でも起こすか? 自分ひとりで? …………。

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