Ino.111 フィーネ島
ヒトリナガサレ
STATS
1人 / 人数
サバイバル / 難易度
スモール / 広さ
OVERVIEW
知らないようで知っている世界。
確かなのは今ここにいるということ。
それだけわかれば十分だ。
チャットとメッセージ
ゲーム中はチャットはALLと同じ表示がされ、またメッセージは公開されません。
エピローグ期間に入り次第チャットは通常公開され、メッセージはゲーム終了後に通常公開されます。
Eno.583:BlancusとYayauikは丸いパンを食べた!ふっくらとした焼き立てパンだ!
(満腹+25)
Eno.583:BlancusとYayauikはラム酒(水割り)を飲んだ! 熟成された味わいが体に染み渡る……!
(体力+10 満腹+10 水分+10)
『おう。いろいろあったが、まぁ悪くない生活だったな。
無事に帰れるみたいでよかったな、ブランクス』
器を持った【白】の手に軽く頭を擦り付ける。
もうすぐ船が出航して、この島が沈む。
最高の晩餐で腹ごしらえをして、再び長い旅に出ようじゃないか。
「……そうだな。まあ僕も、お前がいてくれてよかったよ」
一人だったらもっと淡白に、本当に生きるための行動しかしなかっただろう。
火の番をしたり、荷物を運んでくれたのも助かった。
相棒を労い、グラス代わりの器を傾ける。
【黒】は器を持てないから、乾杯の代わりにこつんと手にした器をぶつけた。
「さて、冷める前に食べるか。ご苦労だった、ヤヤウィク」
『いやぁ……もう何も言うことはないな。
やっぱお前についてると、驚くことばっかりで全然暇しないわ。
ありがとな、ブランクス』
しみじみと【黒】がこれまでのことを思い出して頷く。
こんな島に来てしまった時にはどうしようかと思ったが。
嵐に遭ったり石にぶつかったり散々だった。
だけどそれも今となってはいい思い出だ。
「……完璧だ」
パンに、ピッツァに、水割り。
無人島でこれ以上完璧な晩餐があるだろうか。
もっと材料があれば可能かもしれないが、今の彼らにはこれが最上だった。
何よりずっと食べたかったものが作れたのだ。非常に満足している。
【白】は何も言わずに、ただ楽しげに笑いながら瓶を開けた。
独特の香りがふわりと漂い、それが更に気持ちを高揚させる。
「さすがに、このままじゃちょっと強そうだな」
そう弱いわけでもないが、この後船に乗ることを考えると、あまり酔うのは避けたい。
適度に楽しむのが一番だ。
『ハッ……! お前、その瓶……あの船で見つけたやつ!
中身を調べるとか言っておいて、結局なんだったのか教えてくれなかったやつ……!』
初めてまじまじと見つめる瓶の中身は綺麗な飴色をしている。
このタイミングで出てくるこの瓶、まさか中身は……。
『……酒だな!?』
「まぁ待て。落ち着け。
これで十分過ぎるくらいだが、せっかくの晩餐なんだから、飲み物がただの水じゃ味気ないだろう」
ただの水だって無人島では貴重なものだが、もうそんな段階はとうに過ぎているのだ。
この島での最後の晩餐に相応しいものは他にある。
そう言って、【白】は隠していた瓶をサッと取り出した。
『ぴ………ピッツァだ!!! ピッツァ・マルゲリータ!!!』
ぴょん、と飛び跳ねかねない勢いで、【黒】は嬉しげにマルゲリータを見つめた。
走り回りたいところだが、せっかくの食べ物にホコリをつけると【白】にめちゃくちゃ叱られる。
じっと我慢して、ぱたぱたと前足を動かした。
『やったー!!! 食べようぜ!!!
熱々のうちに食べるべきだ、そうだろ!!?』
せっかくの熱々を冷ましてしまうなんて、そんな害悪はない。食べるべきだ、今すぐ。
焼き上がりを待つこと、しばし。
やがて取り出されたものの仕上がりを見て、【白】は満足げに頷いた。
「ヤバい。完璧な仕上りになっちゃったな。
見ろ、ヤヤウィク。さすがに何も文句のつけようがないだろう」
いい感じに焦げ目のついた薄焼きの生地に、とろりと溶けたチーズ。
トマトと香草の香りは知っているものと何も変わらない。
一体どうなってるんだ、この島は。
『わああ……!! お前、それ……!!
なんか隠れてごそごそやってると思ったら、お前……!!』
驚きの声と共に、【黒】の尻尾がぴんと伸びる。
窯の前をうろうろして、生地が窯に入れられるのをじっと見守った。
「ふふん。驚くのはまだ早いぞ、ヤヤウィク。
ここにもうひとつ、同じ木の実から作ったそれっぽい生地がある」
捏ねられた生地を取り出した【白】は、再び得意げにニヤリと笑った。
「そこに加えて……これだ」
更にその生地の上に、トマトソースをぶちまけて柔らかいチーズと緑の葉を並べる。
『ぱ……パンだ!! とうとうやったのか、お前……。
まさかこんな無人島で本当にパンが焼けるなんて。
お前……すごいな』
【白】がすごいのか、それを可能にするだけの資源のあるこの島がすごいのか。
なんかもうよくわからないが、香ばしい匂いで何もかもどうでもよくなる。
どこからどう見てもパンだ。焼き立ての。ふかふかの。
【黒】の言葉に、窯に向かっていた【白】はくるりと振り返るとニヤッと笑った。
火は苦手なはずだが、この高揚の前にはクソ女のトラウマなんかほんの引っ掻き傷のようなものだ。
「……見ろ、ヤヤウィク。パンだ」
すっと差し出した皿代わりの板の上には、ほかほかの焼き立てパンが鎮座している。
『お、おい。なあ、ブランクス。
なんか、やたら香ばしい匂いがするんだけど……
お前、まさかとうとう……』
窯のそばで何やらごそごそしていた【白】に声をかける。
明らかに今までとは文明レベルの異なる匂い。これはまさか。
「ここが糸の果て、ってことだよ」
アリアドネが繋いだ糸の先。
ここより先にはもう何もない、絶海の孤島。
果ての名が相応しい気がするし、それに。
「それから……大変だったけど、最高に楽しくもあったからな」
だから、fine。二重の意味を込めて、もうすぐ沈むこの島をそう名付けることにしよう。
『フィーネ……fine? 終わり、ってことか?』
海の果てのフィーネ島。
確かに言い得て妙というか、そのままというか。
『名前ねえ。まあ、いいんじゃないか。
無人島だし、勝手に名前をつけたからって、誰も文句言いやしないだろ』
尻尾をぱたりと揺らして首を傾げる。
それならそれで、さて、なんという名前にするか。
