Ino.111 フィーネ島
ヒトリナガサレ
STATS
1人 / 人数
サバイバル / 難易度
スモール / 広さ
OVERVIEW
知らないようで知っている世界。
確かなのは今ここにいるということ。
それだけわかれば十分だ。
チャットとメッセージ
ゲーム中はチャットはALLと同じ表示がされ、またメッセージは公開されません。
エピローグ期間に入り次第チャットは通常公開され、メッセージはゲーム終了後に通常公開されます。
「……海岸線が昨日よりだいぶ上がってきたな」
大きな潮汐力のある世界なのだろうか。
明日になれば更に海面が上がって、やがてこの島が飲み込まれるほどになるというわけだ。
「拾い食い……いや、まあ、今更か」
自分も散々落ちてた木の実なんかを食べたことを思い出して首を振る。
【黒】が食べるというなら別にいいだろう。
小さな魚を拾って持って帰ることにした。
『割と新鮮そうだな。食えるかな』
前足でちょんちょんと魚をつつく。だめそうな臭いとかはしない。
『持って帰ろうぜ。おれが食べる』
『うんうん、よくやったよお前は。さて、おれも寝よ~っと。
起きたらまた散歩にでも行くか。食い物もだいぶ減ってきたしな』
ごろりと横になった【黒】が大きくあくびをする。
一旦小休止だ。この島での生活はまだ続くのだから、引き続き作業はしなければならないが。
少し心の余裕が出来たことだし、ちょっと生活を楽しんでみるのもいいかもしれない。
きっと一度きりしか来られない、未知の異世界なのだから。
「そうだな。……まあ、いいよ。とりあえず満足だ。
はぁー、ひたすら作業して疲れたよ、本当に。
何か食べて、ちょっとだけ寝よう」
ひとまずの目標は達成出来たと思うと、どっと疲れが出たような気がする。
こんなに疲れたのは本当に久しぶりだが、満足しているからか、心地よい疲れだ。
よく眠れそうだ。
『まー、そのあたりは心配しなくても大丈夫だろ。
とりあえずこれで、やれることはやった感じだな。
これでダメなら本当に花火でも打ち上げるしかないが、そんな設備はさすがにないしなぁ』
そこまでしなくとも、きちんと船さえ近くに来れば、気づいてはもらえるだろう。
あまり心配しすぎてもよくないというものだ。
でっかくどーんと構えておくのがいいだろう。
「そりゃどうも。苦労したんだから、それくらいには見えないと困るけどな。
……逆にあんまりいい仕上がりすぎると、そもそもこの島が無人島だと思われないんじゃないかって心配もあるけど」
さすがに普段からこの海域を航行する船であれば、ここに無人島があることくらいは把握出来ているだろう。
この島以外の、この世界のことは全く知らないけど、それくらいは可能な世界であると信じたい。
『さすがの腕力バカでも重労働だったみたいだな。
でもいいじゃん。おかげでなかなかいい仕上がりだったと思うぞ』
【黒】には資材の運搬はともかく、実作業は手伝えないので間近で見ているだけだったが。
急いで設計してありあわせの資材で作ったにしては上等だったのではないだろうか。
あの岩場は島の裏側だから、拠点の明かりが見えないところを通る船にも、灯台の明かりは見えるだろう。
「はぁ~~~~、……さすがに疲れたな。
けどようやくどうにか、目印になりそうなものが出来たぞ」
灯台の設置を完了し、よろよろと拠点に帰還する。
レンガを焼いてモルタルを練って、木材と石を積んで土台を組んで。
完全に土木作業だった。さすがに疲れた。少し寝たい。
『嵐で他にもいろいろ流れ着いてるかもしれないな。
何かないか探しに行くか』
見知らぬ船は気にはなるが、とりあえず後回しだ。
やらなければならないことはたくさんあるのだから。
「船? ……確かに、シルエットはそんな感じに見えなくはないな。
そうだとしたら完全に座礁してるし、壊れてるけど」
まさかあれがいつか聞いた汽笛の正体だろうか?
真偽は不明だが、さすがに泳いで向こうまで渡ってみるわけにもいかない。
「あっちに渡れる方法があればな。
調べてみたいところだけど」
『晴れたなー。いやあ、おかげで無事に済んでよかった。
ところでブランクス、あそこに何か流れ着いてるように見えないか?
あれって……船じゃないのか?』
少し離れた場所にある、小さな島の辺りを前足で指す。
嵐が来る前まではなかったものだと思うんだが。
「まあ、とりあえず嵐が過ぎてから考えるさ。
まだあまり調べられてない場所もあるしな」
急ぐ必要はあるが、焦ることはない。
何しろ今回は消耗が大きかった。
なんとか間に合ったとはいえ、とにかく有り合わせで対策をしただけだから、予定外のことがたくさんあった。
一旦体制を整えて、それからまた改めて考えることにしよう。
『そうだなぁ。前に聞こえた船っぽい音も、この嵐でどうなったかわからんし。
近くにずっといるってことはないだろうしな。
もっと遠くまでアピール出来るようなものがないとなぁ』
とにかくここにいるということに気づいてもらわなければならないのだ。
もっと派手にでっかくどーんと、花火でも上げられたらいいかもしれないが。
「褒め言葉として受け取っておくよ。
一旦弱まったのは偶然だけど……熱帯低気圧なら中心があるから、ちょうどそこに入ったのかもな。
運が良かったんだろ」
あるいは、祈りが届いたというべきだろうか。
そんなわけはないけれども。
「とにかくこれで、もう嵐の心配はなくなった。
後は……脱出のことを考えないとな」
いつまでもこんな島にいるわけにはいかないし、いつまでもいられるわけでもないのだ。
もう4日が過ぎる。あまり猶予はないだろう。
『やっぱなー、文明なんだよなー。
ニンゲンがわざわざ何千年もかけて発展させただけのことはあるな。
知恵は使うためにあるんだな。さすが魔術師を名乗るだけのことはあるじゃないか』
まあ、いざとなれば【黒】は自分だけならどこかの洞窟にでも籠って嵐を凌ぐことは出来るのだが。
どっぷり文明社会に浸かってもう野生には戻れない怪異である。
結局のところ【白】とは一蓮托生なのだ。
快適な衣食住のためにも。
「一旦落ち着いた時に資材を取りに行けたのがちょうどよかったな。
だから言っただろ、窯は役に立つんだって」
猛烈な嵐に拠点を破壊された時にはもうマジ無理かと思ったが、僅かな晴れ間を待って正解だった。
拠点を修理して、レンガを焼いてモルタルをこねて、壁の補強をして。
おかげでこれくらいの嵐であれば耐えられるくらいの強度になった。
やれば出来るものである。
『落ち着いたかと思ったんだが、また荒れてきたな。
いやー、修理が間に合ってよかったよかった』
ぺそりと床に伏せながら、のんびり安堵の息をつく。
どうなることかと思ったが、ひとまずこれで安全だ。
